生成AIの長所や短所を上手に利用する知恵  アイデア広場 その1428

 生成AIが一斉を風靡しています。日本の小中学校の授業でも、使うケースが出てきています。この生成AIができる能力には、素晴らしい点もありますが、凡庸で過度な期待を持てない点もあることが、次第に分かってきました。ある授業で、先生が生成AIに俳句を作らせました。さらに、この授業では俳句に合わせた挿絵もAIに描かせたのです。ここで、面白いことが起きました。紅葉を「燃える木々」と詠んだ句に対し、AIが描いたのは文字通り炎上する木の絵だったのです。子ども達には、生成AIに親しみを感じるようなでき事だったかもしれません。また、ある児童は「生成AIが2021年までの情報しかありません」と、先生に疑問を上げました。この授業を担当した先生は、疑問を持った子どもに「発見だね」と笑顔で応じたそうです。子どもが、生成AIを自由な発想で好きに使うことで、自由な活用ができ、学びが深まっていく様子が見えるようです。AIが社会に浸透するなかで、早期に適切な使い方を身につけ、トラブルを防ぐスキルと身に付けていくことも必要になります。今回は、AIの使い方やその利用方法について、考えてみました。

 あまり知られていなかったことですが、「Chat (チャット) GPT」を開発した米オープンAIは13歳未満の使用を禁止しています。米オープンAIは、13歳未満の使用を禁止し、18歳未満は保護者の同意が必要としているのです。この生成AIは、基本的に子どもの利用を想定していないようです。これは、誤りや危険な情報をうのみにしたりする可能性があるためです。ユネスコも、教室での使用は13歳からとし、教員研修の必要性を強調しています。文科省は、2023年7月に小中高校での生成AIの扱い方に関して指針を作成しました。文部科学省は生成AIについて、開発元が定める利用規約などに基づいて使うよう求めています。一方、現実の使用状況は、進んでいます。「小学生白書2023」によると、小学生の9.8%が、学校で生成AIを使ったことがありました。文科省は2024年度、生成AIの扱い方 の先進的な取り組みをするパイロット校を66校指定しています。教員が使って見せることで、教材とする分には問題ないと指摘していきしています。リスクに対応できる準備が整った学校から、活用することを薦めているわけです。日本の学校でも、生成AIを安全に使うための取り組みが始まっているのです。

 学校の各教科や科目の授業には、到達目標があります。目標を達成するために、授業があります。授業には、子ども達が授業を理解し、学習進度の目標に到達しているかどうかを調べる評価の過程があります。一般的に、授業が理解できたかどうかを調べるには、3段階の評価過程があります。最初は、診断的評価のテストで、単元前の学力を調べることになります。次に、授業や宿題などの学習活動の後で、子ども達一人一人の習得の度合を形成評価する段階になります。この授業における形成評価は、遅れている子どもには補習的指導を繰り返すような支援することになります。最後が、総括評価が子ども達の学習進度や学力を把握するテストになります。診断、形成、総括の流れが把握できれば、学習目標との関連で、子ども達の学力形成が逐一把握されるわけです。このように、授業には、目標、内容、方法、評価の流れがあります。これを先生方が、子ども達を支援しながらその能力を高めていくことがお仕事でした。これらの一部を、生成AI が担当することになれば、楽しいことになります。 支援する生身の先生の条件は、身体的にも精神的にも社会的にも良好な健康状態が求められます。先生方の能力を気持ちよく発揮してもらうことが、教育現場では求められます。でも、ご存じのように、日本の先生方は疲弊しています。そこに、疲れの知らない「生成AIの先生」がヘルパーになれば、先生方の能力は効果を発揮します。

 試験の採点などには、AIの関与がすでに行われるようになりつつあります。さらに進んだ採用のケースが、外国では見られます。日本より少し先を行く、アメリカの大学のお話しになります。ハーバー大学でコンピュターを教えるデビット・マラン教授は、AIを「講師」に採用しています。個々の生徒に応じて問題の難易度を変える生成AIを、「講師」にしているのです。この講師のおかげで、個々のレベルに合わせた学習ができ、学生が積極的になる効果があったと言います。学生の中には、「自分専用の講師がいるようだ」と評価するケースもありました。ある男子学生(18)は、AI「講師」を「かなり使える」と評価しています。このAIの「講師」を、半年で7万人以上の学生が使いました。そして、AIの「講師」は、数百万件の質問に答えたのです。突出した才能をもつ子どもは、「ギフテッド」と言われています。デビット・マラン教授には、狙いがあったようです。ギフテッドといった集団教育になじめない子どもに、適切な学習の機会を与える狙いがあったのです。初歩的な問いへの回答をAIに任せ、ギフテッドといった学生と教授が、深い思考を要する問題に集中する狙いというわけです。今後は、世界中の教育で生成AIが導入されてきます。その生成AIを目的達成のために、上手に使っていく流れが各国に現れています。

 日本では、塾産業においてAI教材の導入が始まっています。atama plus (アタマプラス東京・港)は、人工知能教材を手掛けるスタートアップになります。このアタマプラスは、自社教材を使用する学習塾をフランチャイズチェーンで展開しています。アタマプラスは2017年の設立以降、学習塾向けにAI教材の導入を進めてきました。塾の効率的な運営を支援しながら、AI教材の普及の拡大を推し進めてきたわけです。この塾の生徒は、自身の目標や習熟度に合わせた内容をAI教材で学習します。AIが、生徒の理解度に合わせた問題を生成していきます。このシステムですと、講師1人で30人の生徒に対応でき、人手が不足する塾にも導入しやすいものになっています。講師は、生徒の学習モチベーションを高めたり、進路指導の相談に乗ったりする役割を担うことになります。もっとも、AI教材は使用する生徒によって進度が異なります。そのため、AIを導入側には一定の指導ノウハウを習熟する必要が生じます。アタマプラスは、駿河台学園(東京・千代田)と4月に資本提携しています。「駿台予備学校」の持つ知見も生かし、進路相談など大学受験指導にも力を発揮していくことになるようです。

 塾産業だけでなく、学校の授業にもAIの導入が模索され始めました。子どもの才能を伸ばす仕組みが、多様なデジタル技術の出現により可能になりつつあります。企業の参入も、活発になってきました。その企業の一つに、コニカミノルタがあります。コニカミノルタは、小中学校の児童や生徒の学習を支援する生成AIシステムを開発しました。チャットGPTに代表される生成AIは、インターネットに存在する情報を学習します。これらの生成AIは、子ども教育に適していない情報を提供するリスクがあるのです。そこで、コニカミノルタは、AIが不適切な言葉を回答に使わないように、学習データを学習指導要領、教科書、そして参考書などに絞ったのです。学習指導要領のデータなどを活用し、生徒一人ひとりのレベルにあわせて支援することが可能になります。コニカは、AIが生徒の学力データから苦手分野を見つける機能などを開発しています。また、自治体ごとに行う学力調査のデータを活用し、生徒一人ひとりのレベルにあわせた支援を考えています。コニカ方式は、学校全体や地域全体の学力調査の結果や日々の学習の取り組み状況を分析することも可能のようです。学習の取り組み状況を分析し、一人ひとりに合ったメッセージをタブレットで表示します。生徒の学習状況を教師にも報告し、学校での授業の改善などに生かしてもらう支援の仕組みです。自治体や学校の要望に応じて、生徒が親しみやすく対話できるような仕組みを模索しています。

 最後になりますが、この生成AIができるアイデイア集めの能力は、凡庸で過度な期待は禁物と言われるようになりました。生成AIは、知的作業の中核ではなく、周辺作業の効率化に用いる方が多いようです。生成AIの翻訳や要約のスピードは、優れたものがあります。これを、利用しない手はないようです。ある企業は、この優れた能力を利用しています。その会社は、株式会社セガ フェイブになります。この会社は、玩具の開発・製造・販売、アーケードゲームの開発・製造・販売を手掛けている企業です。この会社のおもちゃ開発は、1つのおもちゃにつき数人のチームで情報収集から企画開発、宣伝まで行う仕組みです。購入者の意見や要望は、企業にとって大切なものです。これまで、購入者アンケートに関しては、担当者自身が読み込んで分析していました。この分析から、担当者が考えたアイデアを絞り込んで社内デザイナーに依頼する流れでした。この流れには、試行錯誤する過程が増え、開発に遅れが生じていました。そこで、生成AIを取り入れることにしました。購入者アンケートでは、数千件の自由記述欄の内容から生成AIでキーワードを抽出します。生成AIは、前後の文脈から肯定的な意見なのか否定的なのかを判断して資料にまとめました。この生成AIによるまとめは、分析にかかる時間が以前より、8割短縮できたのです。数人のチームの業務負担の軽減が課題でしたが、生成AIで負荷を減らし、企画に多くの時間を取ることができるようになりました。さらに、工夫がなされています。生成AIには、おもちゃのデザインを学習させたのです。初期デザイン案は、簡単なコンセプトなどを入力すれば生成AIがイメージ画像を作成するというものでした。簡単なコンセプトなどを入力すれば、生成AIが複数パターンのイージ画像を作成するのです。社内デザイナーに依頼し、手書きのデザイン案を作成していたより数段早く、企画進むようになりました。イメージ画像は参考や説明として使い、最終的なデザインは開発担当者が手掛けるようになりました。短時間で多くの試行錯誤ができ、おもちゃの完成度を高められるとAIの導入に手ごたえを感じているようでした。

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