ストレスを軽減するスキルを身に付ける アイデア広場 その1413

 現代社会は残念なことですが、ストレスがたまりやすい環境にあります。ストレスの過剰な蓄積により、ホメオスタシスが崩れることもあります。ホメオスタシスの乱れにより、引き起こされる反応は、身体面・心理面・行動面に見られます。身体面での反応は、息切れ、食欲低下、胃痛、便秘、下痢、不眠などの症状が現れます。心理面では、やる気が出ない、興味が湧かない、体が重く動かない(精神運動制止)などの症状がでてきます。さらに、進むと、自分を責めたくなる(罪責感)、生きていたくない、死にたいと思うなどの症状に至ることもあります。行動面での反応は、ネガティブな行動、ひきこもり(登校拒否・出社拒否) になるなどとして現れることもあります。ストレスが過剰になり、その人の許容範囲を超えたとき心身などにさまざまな悪影響を及ぼすことになります。自衛の策としては、ストレスが慢性化することを避けて、健康を損なうことがないようにすることになるわけです。今回は、健康を損なわない仕組みを考えてみました。

 ストレスの原因になるものを、ストレッサーと呼びます。このストレッサーには、内的なものと外的なものがあります。内的なものには、ストレスを起こす感情が主で、外的なものはストレスを起こすできごとになります。たとえば、数学のテストができなかったらどうしょう」という恐れは、内的ストレッサーになります。親が離婚するかもしれないということは、外的ストレッサーになります。ストレッサーには、「家のカギが見つからない」というささいなものもあります。そして、大きなストレッサーには、家族や友だちの死、失業、失恋による別れなどがあります。このようなストレッサーが襲ってくると、身体はストレスホルモンを分泌して危険から守る準備をします。ストレスを感じると、脳からエピネフリンとコルチゾールという化学物質が分泌されます。エピネフリンは、別名アドレナリンとも呼ばれます。コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一つです。 主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などで、生体にとって必須のホルモンになります。ストレッサーがなくなるとストレスホルモンがしずまって、身体は元の状態にもどります。

 ストレスをなくす研究は、長年にわたって行われてきました。残念なことですが、生活からまったくストレスをなくすことはできません。そのような中で、自然にストレスに対して、上手に対処する方法が身についている人達がいます。ストレスに強い人の特徴は、自尊感情が高いことです。この自尊感情は、自己に対して肯定的な評価を抱いている状態を意味します。自分を肯定的にとらえ、自分の気持ちや考えを大事にする人達ということになります。大切なことは自分を大事にして、ストレスに対処する方法やストレスを減らす方法を知ることになります。ストレスに支配されるのではなく、ストレスをコントロールするスキルを身に津つけることになります。対処する方法が身についている人は、ストレッサーを病気にならないように対処していきます。一般に、ストレスにそのつど対処していける人は、ストレス耐性が高いといわれています。このようなスキルを身に付けている人は、現代社会を優雅に過ごすことができるようです。

 ストレスにそのつど対処して、こなしていける人が持っているスキルにリラクゼーションがあります。リラックスすることは、ストレスを軽減する効果的な方法のひとつです。リラックスを上手することを、リラクセーション反応と呼びます。自然なリラクセーション反応で、ストレスの症状に対処することできるわけです。たとえば、呼吸を意識することよってストレスの状態をコントロールすることができます。この呼吸によるリラックスを上手に行うと、脈も安定し、血圧も下がります。呼吸を意識してゆっくり深くすることによって、心を落ち着いた状態に切り替えられるわけです。呼吸と感情は、密接につながっています。不安やストレスを感じる場面では、呼吸を意識してゆっくり深くすることがお薦めです。このリラックス方法は、お金もかからず、少し時間がかかるだけです。

 ストレス回避には、別の攻め口もあります。小さな子どもや動物などを可愛いと感じると、オキシトシンが分泌されます。オキシトシンは、愛情を感じたときに多く分泌されるホルモンで、別名「愛情ホルモン」とも言われています。このホルモンには、ストレスを抑える作用があることがわかっています。オキシトシンは、腰痛、ひざ痛、頭痛、五十肩などの身体の痛みも和らげてくれます。さらに、過敏性腸症候群や食欲不振などストレスによる胃腸障害を改善する働きもあります。オキシトシンの分泌を促進するためには、受動的な刺激あるいは能動的な刺激が必要です。受動的な刺激には、愛される、好意をもたれる、共感される、大切にされることから生まれます。赤ちゃんが、お母さんに愛されるなどはその代表的な例になります。能動的な刺激には、愛する、好意を持つ、共感する、関心を持つことが必要になります。これも、お母さんが赤ちゃんを可愛がればかわいがるほど、このホルモンが出ることになります。赤ちゃんもお母さんも、可愛がられ、そして可愛がることによって、ウインウインの関係が成就していくわけです。このようなウインウインの関係は、母子だけでなく、家族、友達関係、職場内の良好な関係においても成就されていくものです。

 ストレス対処法には、リラックスやホルモンと別の切り口もあります。自分が望む状態に切り替わるスイッチをつくることを、「アンカリング」といいます。感情が切り替わる神経回路をつくれば、自分が望む状態に切り替えることができます。たとえば、毎日その日にあった「3つの良いこと」を書き出します。3つの良いこと探し出し、これを毎日続けるとポジティブな思考の神経ネットワークが形成され、そして強化されます。この3つには、「天気がよくて気持ちいい」、「味噌汁が美味しかった」、「電車で席を譲った」などになります。これを毎日続けると、何事もポジティイプに考えやすい脳がつくられていくことになります。ポジティブな未来を繰り返し想像すれば、肯定的な未来を思い描く回路が発達していきます。このような行動を続けることにより、ストレスを抑制する心身の状態が形成されていくわけです。

 最後になりますが、ストレスは人の成長につながるというプラス面も持っています。ストレスを乗り越えた経験が、達成感をもたらす喜びとなり、その人の自信となるケースもあるのです。ストレスを乗り越えた経験が達成感の喜びとなり、次に出合うピンチをチャンスに変える力になります。ストレスがあることが、必ずしも心や身体に悪影響を及ぼすわけではありません。ストレスとその許容範囲を自分で自覚できれば、ストレスはよい作用をもたらすことも分かってきました。「最大の名誉は決して倒れないことではなく、倒れるたびに起き上がることである」などと言う方もいます。これも、あながち間違いではないようです。失敗や達成感を経験することは、私たちの生活にとってとても大切なものになります。ストレス原因には、いろいろな欲求の種類があり、それを体験し理解しておくことが、ストレス社会を乗り切り、より高みに引き上げることになります。どの欲求が自分にとって強いストレスになっているかに気づけば、生活に大切なことを得やすくなります。マズローは、人間の欲求を「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層を提示しています。これら欲求を理解し、葛藤などを経験し、そして上手にそれらを克服しながらながら、ストレス社会を乗り切る知恵とスキルを身に付けていきたいものです。

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