中国で音楽ビジネスを少し成功させる仕組み  アイデア広場 その 1502

 急速な経済成長を続けてきた中国ですが、今後数年は減速が続くとの見方が支配的になっています。中国国内の企業に、自律反発するメカニズムが働きにくくなってきています。もちろん、中国政府はこの流れを受け入れているわけではありません。政府は、年間約5%の経済成長率の維持に真剣に取り組んでいます。そのためにも、デフレ懸念を和らげようとしています。その方策として、国内の消費拡大に力を入れています。消費が上昇に転じれば、デフレ圧力を一定程度緩和する可能性が出てきます。中国政府は、若い世代がいかに十分な賃金を稼ぎ、支出に前向きになれるかを模索しています。もっとも、模索だけでなく、現実的な対策が注目を集めるようになりました。中国の習近平指導部が大規模な財政支出策を打ち出すとの観測が強まっているのです。全国人民代表大会で、10兆元(約210兆円)の追加発行を決めるとの予想があります。この10兆元の予想が、「不動産の下げ止まりにつながる」といった楽観論を呼ぶ兆候も出てきています。その一つに、金融緩和の表明や財政支出が続くとの期待から中国株は騰勢を強めてきました。上海総合指数が、3300を挟んだ一進一退に転じています。この上海総合指数は、2015年の中国株バブル崩壊以降の水準になります。一方、10兆元の予想があるが、即座に景気浮揚に回る額については見解が定まっていない情況もあります。10兆元だけでは、不動産不況や人口減による需要不足を穴埋めするには力不足との見方もあります。10兆元の予想が、市場の期待を下回る「空砲」との疑念もくすぶっています。

 不動産株と建設株は、10兆元の経済対策を渇望しています。その現われとして、破綻すらささやかれたマンション大手、万科企業の株価は8月末の安値より5割高い状況を生み出しています。経済対策によって、建設中を含めて50億㎡に及ぶ住宅在庫の解消がどこまで進むかは不透明のままです。10兆元対策の過半を、地方財政の支援に回す見込みになります。不動産では、開発や販売が滞った土地や住宅を地方政府が買い戻すわけです。これは、新たに需要を生み出したり、成長を促したりするお金の使い方ではありません。これは、市場に出回らないお金ということになります。さらに、金融を除く上場5200社の24年1~9月期は前年同期比7%減でした。企業業績はマイナスになり、それと歩調を合わせて上場企業の純利益も減少しています。業績面では、これ以上中国株が上昇産続ける理由は乏しい状況です。中国市場は下半期から、回復する見通しを持っていたが、その兆しが見えない苦境にあるようです。

 中国経済が停滞しているとは言え、中国は14億人を抱える消費の大国です。多く日本企業が中国に進出し、利益をあげています。その中にも、明暗を分けている企業もあります。明るい企業の一つに、サイゼリヤがあります。サイゼリヤの純利益が、過去最高となったけん引役は中国になります。稼ぎ頑として、存在感を高めているのが中国というわけです。中国では、一部の地域で日本のバブル崩壊後のような状況がみられています。中国では、倹約志向が強まり、低価格メニューが人気になっています。サイゼリヤは、バブル後の景気悪化のなか、低価格を売りに日本で急成長した経緯があります。この成功体験を、中国でも再現しているようです。地域別売上高では、上海や北哀などの都市部で売り上げが2~3割伸びています。広州の店では「ミラノ風ドリア」は、18元(約380円) と低価格を維持しています。18元と地場をはじめとする同業他社の外食チェーンに比べると、低価格を維持しているのです。広州サイゼリヤ食品が、約3000万ドル(40億円強) を投じて広州に新工場を建設に着手しています。この工場では、ソースやパスタ、ピザなどを製造することになります。広州新工場を通じて、商品を安定供給しながら原価も下げる考えのようです。停滞している中国で、自社の強みを生かして業績を伸ばそうとしていいます。

 一方、やや暗い企業がヤマハになるようです。ヤマハは、2024年3月期の連結純利益が前期比10%減の 345億円になる見通と発表しました。楽器や音響機器ハードの地域別売り上げで、約16%を占めヤマハにとって中国は主要市場になります。この中国で、アコースティックピアノなどの販売不振が続いています。市中在庫が高い水準にあり、今後は減産や一部商品の値下げで在庫調整を進める苦しい展開のようです。話は、少し前になります。テレビを見ると、使われていないピアノを買い取るコマーシャルがこれでもかこれでもかというほど流れた時期がありました。日本の使われていないピアノが、中国に大量に輸出されていました。中国の中間層の要望に応じて、中古ピアノ市場が花開いていた時期です。多くの人口の存在は、ビジネスチャンスになります。中国では学校の勉強以外に、英語やピアノなどを習う子どもが急増していました。スタートラインで、子どもを負けさせるわけにはいかないという意識が強いのです。厳しい競争社会では、教育と付加価値を持つスペックのスキルアップに力を注いでいました。特に、ピアノに対する関心が高まっているようです。欧米では、中間層でもピアノは置くことのできる住宅を持つ人は、ちょっと上のステイタスを享受していました。日本では1980年代に入ると、ピアノの普及率が25%に達しています。誰も弾かなくなった休眠ピアノが、日本国内に500万台ほどありました。そのピアノが、中国に流れたわけです。でも、その流れも、弱くなり、ヤマハなどが扱う音楽器機にも秋風が吹き始る状況が生まれているようです。

 これからの中国経済を支える層は、Z世代と言われています。この世代の中国人は、国内人口約20%を占め、将来の消費や子育ての担い手になります。Z世代は、急速な経済成長と生活水準の向上の時代に育った若者たちです。おそらく物質的な面で中国史上最も豊かな子ども時代を過ごしてきました。彼らは、生活水準の向上の時代に育った若者たちです。でも、彼らを取り巻く状況は、将来に対する不安を増長しています。その一つが、若者の失業です。16~24歳の2024年2月の失業率は、15.3%と、雇用の面でも不安を抱えています。Z世代については、将来に対する不安い失望感が深まっているわけです。日産自動車は、中国の清華大学と共同研究センターを設立し、この「世代」の価値観を調査しています。日産は、1990年代半ば以降に生まれた中国の「Z世代」の価値観を理解において苦戦が続いていました。この調査で、苦戦の陥っていた理由に、気づく一助になったと述べています。研究では、中国の顧客が求める商品やサービスを提供するための知見を得られたとしています。中国では、付加価値の高い商品とコスト重視が中心の商品の二極化が進んでいます。価格と性能のバランスを重視した新シリーズを通じて、若い顧客層の開拓をしていくようです。日産だけでなく、中国で活動する企業はでZ世代をターゲットにした新シリーズを立ち上げています。

 全人口の18%を占める中国のZ世代は消費行動の特徴は、節約志向が鮮明になりつつあります。中国へ上海の高齢者向け格安食堂では最近、20代前後の若者が利用客の3分の1を占めるまでになっています。よく訪れるという24歳の女性来店客は、一日の食費を、100元(約2100円)以下に抑えられて助かる」と話しています。次は、旅行のケースです。あるホームシェアリング運営会社では、Z世代利用者による「寺院」の検索数が急増しています。この寺院のサービスを歓迎するのは、高い環境意識や強い自己肯定感ある若い世代になります。高価なホテル利用に代わり、寺院滞在も低予算の選択肢として人気が高まっているのです。早朝の膜想(めいそう)体験も含めて、宿泊料は1泊わずか80元になります。春節期間中には、Z世代利用者による「寺院」の検索数が、過去の同シーズンに比べ24倍に急増したのです。SNS上では品質やコストパフォーマンス重視を意味する「反抗消費」といった言葉が流行しています。このように、外国製ならば良いとか、自国産が良いとかの選択ではなく、自分の立ち位置から判断する若者が増えているということになります。

 最後になりますが、中国には、ピアノを趣味にする人たちがいます。彼らには、良い調律状態のピアノを弾きたいという欲求があります。より良い状態で、繊細なピアノを運ぶスペシャリストが、必要になります。単なる宅配業者に任せれば、ピアノの機能が損なわれる場合もあります。移動後、ピアノの調律も欠かせません。だとすれば、少なくとも1~2年に1度は調律も欠かせません。ピアノを移動する場合でも、運ぶスペシャリストやピアノの機能を維持する保守点検に関わる人の存在が必要になります。おそらく、中国にはこれらを支える人材が不足しているはずです。もし、ピアノの購入者のリストがあれば、一つのビズネスの種ができます。調律などの人材を育成し、中国市場に送り出すことができれば、一つのスキマ産業として成立します。低コストで、確実な利益を出せることになります。ピアノの販売や調律、そして運送の商品設計を整備し、中国のピアノ市場を再復興したいものです。

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