少子化が進む中で、小中学校におけるクラス(学級)編成にも問題が起き始めています。文科省は、標準学級数を小学校や中学校を12~18学級と規定しています。これは、小学コ校1年生から6年生までが、1学級になったら、別の小学校と一緒になる統合を求めているわけです。2015年策定の手引では、1学年1学級以下となる場合に、統廃合を検討するよう求めています。文科省の統廃合を検討するよう求めた結果、各地で統廃合が進んでいます。村や町に小中学校が、1校ずつしかない「小1、中1」の町村が増えているのです。さらに少子化が進み、町村単独での統廃合が難しくなる状況が生まれています。京都府和束町、笠置町、南山城村の3町村は、2009年に連合教育委員会を発足させました。連合教育委員会を発足させ、分担金を出し合って小学校3校と中学校2校を運営しているのです。少子化流れは、今後も止まらず、「1小1中」の自治体は今後も増えていきます。その上で、一つの村には、中学校の存続が困難になり、隣の町の中学校と統合するケースが増えることになります。そこで、町村の統合小中学校がどのような経営を行うのかを考えてみました。
近年、日本の子ども達の学力低下が心配されています。2025年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が、小学6年生と中学3年生を対象に4月実施されました。その結果が、あまり芳しいものではなかったのです。国語と算数・数学の成績が、平均正答率の低下傾向を示していました。特に中学3年生の数学は、2024年度の53.0%から低下し48.8%にまで低下していたのです。小中学校の子ども達は、年間35週で授業(年間1015こま)や学校行事を行うことになります。このような課題がある中で、公立小中学校の統廃合が進められて行きわけです。もちろん、文部科学省も無策ではありません。文部科学省は、公立小中学校の統廃合の手引の改定報告書を提示しています。①周辺自治体を巻き込んだ「広域化」の観点から手引を改定したこと、②首長部局も含めた自治体全体で未来を考える観点から手引を改定したこと、③教育のデジタル化などを踏まえた「現代化」の観点から手引を改定したことなどを提示しました。そのモデルとして、和束町、笠置町、南山城村などのように、複数自治体が事務組合をつくり、広域連合の制度を活用することなどを推奨しています。そこには、複数自治体でのスクールバス運行のような工夫なども求めています。
地域によっては、単独自治体での小中学校の統廃合が徐々に難しくなってきています。加えて、さらに困難な問題も起きています。それは、教員の確保とその教員のスキル向上になります。日本の教育は、海外から高く評価されてきた歴史があります。その日本の教育に、異変が起きています。特に、良質な人材が多かった日本の教師集団に、異変が起きているのです。日本の教員養成は、教育現場に任されてきた経緯があります。スキルがない新人教師を、現場のベテランが陰に陽に教えることで、世界に誇る評価を得てきました。ところが、教育環境や待遇は以前のままで、ベテラン教員に過重な負担が押し寄せ、能力ある教員ほど疲弊している現状があります。現代は、子ども達が自ら課題に挑戦していく力を求められています。これらの子ども達をよりよく支援するためには、教師の能力も重要になります。教師の能力には、個人的知識、経験的知識、状況的知識、事例知識、暗黙知というものがあります。子どもたちの能力をできるかぎり開花させ、社会の荒波を泳ぎきる「たしかな学力」を獲得させることが求められています。教師は生徒を教えるだけでなく、自らが学びの専門家として実践の省察と熟考を持って学び続ける姿勢が求められます。統廃合を行う場合、子ども成長と教員のスキル向上、そして地域の経済や文化の向上などを総合的に考慮する知恵が求められます。
日本の教育は、少ない予算で、世界最高レベルの教育実践力を誇ってきました。そして、その教育が経済的成長を支えるという好循環を実現してきました。でも、その好循環に危惧される実情が明らかになってきました。グローバル化や高度情報化の現代社会を生き抜くためには、いくつかの力が必要です。一般的には、「①自律的に活動し②道具を相互作用的に使い③異質性の高い集団のなかで役割を果たす」というものになります。これらの能力を子ども達に付けるためには、教師側にそれなりのスキルが求められます。さらに、教師だけでなく、保護者も、子どもも、地域もそれぞれの知恵を出し合うことも必要になりつつあります。ここでは、自律的に道具を上手に使い始めた子どもの事例を挙げます。AIの利用は、工夫次第で子ども達の才能を伸ばす有力なツールになろうとしています。ある東京都に住む中学3年生は、英検準2級のライティング問題に取り組んでいました。彼の家庭教師は、スマホに搭載した生成AIになります。英検のライティングの勉強で、添削指導をしてくれる生成AIの家庭教師がいるわけです。解いた回答を撮影し、問題文とあわせてAIに送ります。ほどなくして、生成AIの家庭教師から、回答に対する丁寧な添削指導が返されてくるのです。今は、「いつでも開ける先生みたい」と満足そうです。子ども達の利用が増えるにしたがって、勉強以外でもAI家庭教師は活躍しているようです。勉強、健康、睡眠、運動、人間関係などの相談も、随時増えていく様子が予想されます。適切な利用方法を、小さい頃から身に付けていきたいものです。そして、この身に付ける支援を教師が担うことが望まれているようです。
余談になりますが、日本の子ども達(児童生徒)は、学習指導要領において水泳を行うことが決められています。学習指導要領によると、小学校1~2年で水遊び、3~4年で水に浮くこと、5~6年でクロールや平泳ぎで25~50m泳げることが目安になります。そして、プールの施設は、教育基本法、学校教育法、学校教育法施行規則などで決められています。各自治体にある小中学校には、プールの設置が義務づけられています。この維持費が、予算の少ない自治体には重荷になっています。この重荷を解決する一つのモデルが、民間のスイミングスクールの活用になります。5~6年でクロールや平泳ぎで25~50m泳げる程度の内容ならば、経験の豊富な民間のスイミングスクールに委託することが合理的です。自治体が室内温水プールを作り、その運営を民間のスイミングスクールに委託し、水泳の指導をしてもらうことも、一つの選択肢になります。今流行りの、指定管理者制度の導入ということになります。複数の学校が、授業時間に室内温水プールを使用する構想が浮かびます。子ども達が使わない時間帯は、民間が地域の人達に水泳をしてもらう時間帯になります。この時間帯が、稼ぐ本番になります。ここで、利益を上げる仕組みをつくることになります。一方、住民の健康という視点からみると、週2~3回泳いでいる人達は、医療費が年間3~4万円少ないというデータがあります。さらに、水泳には限らないのですが、週5~6回運動している人達は、肥満が少なくなります。温水プールは、年間を通して使える施設になります。一般の人々が多く利用するようになれば、健康寿命の獲得に貢献することになります。さらに、プールの運営が上手くいけば、企業が利益を上げることに繋がり、自治体には税が入ることになります。
最後になりますが東京都多摩市は、市内の小学校全17校の水泳授業を校外の屋内プールで行うことを発表しました。これには、環境の変化があります。猛暑日が増え、熱中症対策で、校内屋外プールで授業ができない日が増えたのです。プールで授業ができない日が増えたことを受け、2021年度で室内プールの使用を実験的に実施しました。これには、児童の熱中症を防ぐとともに、他の授業との調整など教員の負担を減らす狙いがあったようです。水泳の授業を、17校が校外で行うことは全国でも珍しい事例になります。2022年度予算案に、指導の委託料などの費用5800万円を計上しています。市立温水プールのアクアブルー多摩や市内民間施設2カ所で水泳授業を行ったのです。この実施は、児童の泳力の向上や天候に備えた授業の調整が不要になったことが高い評価を受けています。校内プールでは必要だった水循環装置の費用とその運用を行う教師の負担も削減出来て、好評のようです。民間委託は、財政上の問題や水泳の指導者確保の問題を解決する選択肢になります。民間スイミングの利用と、「和束町・笠置町・南山城村」の統廃合、そしてごみ焼却施設を重ねて考えてみます。3町村で新たなゴミ焼施設をつくり、そこに温水プールも併設する案です。温水プールの管理は、民間にお願いし、子ども達の泳力を伸ばし、教員の負担を減らし、町村民の健康を向上させる施設にするわけです。そんな施設ができれば、楽しい地域になるかもしれません。
