桜は、日本人に親しまれている花になります。2026年の花見シーズンは、開花予想を上回る早咲きとなりました。宮城県大河原町と柴田町を流れる白石川沿いに約1200本の桜が並ぶ「一目千本桜」があります。明治時代に地元の方が桜の苗を植えて、現在は多くの人の目を楽しませる名所になっています。この「一目千本桜」は、蔵王連峰の残雪と桜並木がおりなす絶景は「さくら名所百選」にも選ばれています。「おおがわら桜まつり」は、開花予想を基に4月3日からの開催を予定していました。ところが、温暖な天候が続いて開花予想が予想以上にはまったのです。開花予想が早まり実行委員会は、3月中旬になって急きょ4月1日からの開催に変更したのです。2日早めるだけで、かなりの事務作業が増えたようです。本部などが入る仮設コンテナの搬入や警備員の手配の調整で、かなりの負担増があったのです。ポスターなどは各所に配布済みで、日程変更の周知に追われる作業も増えました。幸い期間中の集客は好調で、4月11~12日の土日には10万人ほどが訪れました。
花見は、「花より団子」ということもあり、露天商などでにぎわう場でもあります。人は、気温が15℃以下の場合、外出を控え、屋内で過ごす人が増えます。15℃を超えると、低温による羅患のリスクが低くなるために、屋外に出て活発に活動するようになります。日本人にとって桜見物は欠かせないものです。東京の場合、桜が開花する3月下旬から4月上旬までの平年の最高気温は、14~17℃になります。この時期の最高気温が高い場合、満開までの期間は短くなります。反対にこれより低ければ、満開までの期間が長くなります。つまり寒ければ、桜見物に来る人々は途絶えることなく、長い期間にわたって商売が成立することになります。高温になれば、桜見の期間は、短くなり、売上げは減ることになります。寒いときの花見において売れ筋の商品は、おでん・揚げ物、焼酎・日本酒、そして肉まん・あんまんなどです。反対に温かいときは、焼き肉・寿司、ビール・発泡酒、そして漬け物・清涼飲料水などになります。これらを過去のデータと天気予報によって、周到に準備しておくことになります。食材の仕入れ、店舗の開設、バイトの確保など短期間で集中的に仕事を行うことになります。上手くいけば、短期間で多くの収入を得ることができます。ここで難しい点は、天気予報になります。春の天気予報は、精度が低いと言われていました。この時期は、三寒四温とか春一番とかが突然やってきます。3月から4月にかけての天候は、予測が難しいといえます。もちろん、予想が的中すれば、短期間で通常より多くの利益を獲得できます。お花見は、運営者の腕の良し悪しが発揮される場面でもあります
開花予想の当たり外れが、各地の桜祭りの成否を左右することになります。樹齢 1000年以上とされる福島県三春町の「三春滝桜」は昨年より6日早い開花を迎えました。三春滝桜(ベニシダレザクラ)は、日本三大桜に数えられています。ここは全国的にも有名な花見スポットで、今年は昨年並みの約13万2000人が訪れています。1本のベニシダレザクラは、複数咲き開花時期がずれる並木桜と違う点で、見ごろに訪れることが難しい桜になります。日程が固まっているツアー旅行では、開花時期がずれると期待に応えられないこともあるからです。また、秋田県仙北市の「角館の桜」は、武家屋敷通りのしだれ桜で知られています。もちろん、さくら名所百選に選ばれています。仙北市の「角館の桜まつり」は、満開と同時の4月15日にスタートしました。宮城県とは、違う方式を取ったようです。満開の時期が、平年比で1週間以上早まったのですが、予定通り行ったということです。東北地方の桜の開花時期は平年比で8~11日早く、満開を観測した日は8~13日ほど早くなりました。東北の桜観光は、予想超える「早咲き」に翻弄された面もあるようです。多くの観光客が消費する「団子代」を、地元がしっかり受け取る仕組みを確立していきたいものです。
予想超える「早咲き」に翻弄されない工夫が求められています。不具合があれば、それに対応する人々が現れます。また、対応するツールも開発されるものです。気象庁は、ビジネス創出を念頭に「気象ビジネス推進コンソーシアム (WXBC)」を2017年に設立しました。さらに、WXBCは2021年に「気象データアナリリスト」の認定制度を創設したのです。「気象デーアナリスト」は、気象情報をビジネス分野に生かせる人材になります。この養成講座には、コンサルタント会社や建設業などから応募がありました。これまで、この講座を修了した人材は、各分野で活躍しているとのことです。気象庁は、これまでもホームページ上で、アメダス(地域気象観測システム)と使って詳細なデータを公開してきました。アメダスは、気象庁が1974年から運用を始めました。この当時のアメダスは、17km間隔で全国約1300地点に設置されています。この間隔での気象情報は、利用できるわけです。でも、もっと詳しい情報を欲しがる人達もいます。その要望に超ええるために、気象庁はスマートフォン向け「デジタルアメダスアプリ」は、全国を1km四方のメッシュに分割し、詳細な気温や降水量などの「面的気象情報」を無料で提供するサービスを行っています。日常の天気確認だけでなく、農業の栽培管理やビジネスの需要予測など、幅広い用途で活用されています。観測所がない場所でも、周囲のデータから1km四方ごとの天気、気温、降水量を推定・表示しています。また、直近の予報だけでなく、過去の気象データや、農業に役立つ「積算温度(指定期間の気温の合計)」などを簡単に確認できるものです。「気象デーアナリスト」は、「デジタルアメダス」を活用して企業業績を支援する人材ということになります。各地の桜まつりの精度の高い予想は、地域経済の向上に貢献するものになります。
「さくらまつり」を継続的に成功させている場所が、弘前公園で開かれる日本有数の「弘前さくらまつり」になります。「弘前さくらまつり」は、52品種2600本の桜が咲き誇ります。このさくらまつりも、早咲きが予想されたため、前年より6日早い4月10日に開幕しました。4月17日に満開となり、4月19日の日曜日には会期中最多の35万人が訪れています。その後も、サクラの開花は続き、「弘前さくらまつり」は、5月5日までの会期は26日間と過去最長となりました。なぜ弘前のさくらまつりは長く続いたのでしょうか。その理由は、さくらの種類が多いことでした。ここのお城では、ソメイヨシノがピークを過ぎたあとにも見ごろを迎える7品種のさくらがあるのです。7品種の「弘前七桜」」の魅力は健在で、会期後半にも観光客が途切れずに訪れたのです。さらに、長く続くさくらの開花は、インバウンド(外国人観光客)の誘致にも成功しているようです。大型クルーズ船や鉄道、航空を利用するインバウンドが、昨年以上に多いという数字を残しています。残念だったのは、5月20日に最大震度5強を観測した三陸沖地震が発生したことでした。この影響で、人出は前年より3万人少ない228万人という結果になりました。1カ月弱で、約230万人を集客すれば、その人たちが落とす「団子代」は地域経済に大きな利益をもたらすことになります。
余談になりますが、温暖化によりサクランボの産地が北上してきて、青森県のサクランボが面白いといわれるようになりました。サクランボの主要産地は、断トツで山形県です。山形は、温度差の厳しい地方でもあります。気温の温度差がある場所に、良い果物ができます。この地の利を生かして、山形のサクランボは圧倒的な強さを発揮してきました。でも、温暖化の波は、山形の気候の優位性を徐々に脅かしつつあるかもしれません。青森のサクランボは、新興勢力です。山形よりはるかにリーズナブルな価格で、販売している実情があります。青森のサクランボは、甘みとか粒の大きさでは、山形にかなわないそうです。それを、低価格でカバーしていることが実情です。人間の味覚の特徴は、冬は温かく甘いものが好まれ、夏は冷たく酸っぱいものを好むというものです。サクランボのような果物は、夏に好まれます。とすれば、暑くなるに従って酸味の強い品種を生産しても良いことになります。青森の地の利を生かして、甘みと酸味を自由にコントロールできるサクランボの生産が可能になれば、面白い産地になります。山形と秋田、青森がタッグを組んで長いシーズンにわたって、甘さや酸味をコントロールしたサクランボを消費者に合わせて提供していくことができれば、この3県に豊かなサクランボ農家が出現するかもしれません。
最後になりますが、虫刺され薬「ムヒ」を製販売する「池田模範堂」は、気象情報をビジネスに役立てています。予報データを照らし合わせることで、生産量や広告のタイミングを見極めています。気象情報は、かねてマーケティングや需要予測などでも役立てられてきました。気象庁は、気象データが「観光施設の集客見込みや飲食店の仕入れ量の判断にも役立てられる」と話します。WXBCの会員は民間気象予報会社や製造業、小売業など1500社を超えました。今後は、データをもとに需要予測などを行えるAIを使ったシステムの開発が進められていくようです。この知見が、各地の「さくらまつり」における精度の高い気象情報とマッチングすれば、さくらまつりより有益で楽しいもの昇華するかもしれません。訪日外国人旅行者の意向調査(25年度版)では、「自然や風景の見物」が最も多く55.1%でした。次いで多いのが、「桜の観賞」で52.6 %になっています。インバウンドの期待も大きい桜は、重要な観光資源になります。東北運輸局は、2025年のインバウンドの実績が1062億円で、のべ277万人の宿泊客があったと発表しました。さくらの名所が多い東北地方には、観光資源が豊富ということになります。この資源を、生かす工夫を重ねていきたいものです。
