豊かな市町村になる工夫  アイデア広場 その1786

 日本に勢いのあった高度成長期には、予算が毎年増加した経緯から、水道事業も交通インフラも拡張していきました。でも、成長が止まり、少子高齢化が地方に常態化するにつれて、過剰なインフラが重荷になってきました。拡張した上下水道も、その維持や修理に多大な費用が掛かります。多くの自治体の水道事業は、赤字経営になっています。旧市街から、郊外に発展してきたスプロール現象は、道路や下水道の公共投資の効率を悪化させてきています。人口の減少は、地方の税収を減らしていきます。各町村の歳入の中で半分近くを占める地方交付税は、人口や面積などに応じて算出されます。人口の減少に伴い多くの市町村は、地方交付税を前年度より減らしていくことになります。現在、多くの市町村には、住民にフルサービスする体力はありません。でも、予算不足や財源不足にもかかわらず、従来の事業やサービスを続けようとする自治体もあります。今回は、二宮尊徳が行った改革をモデルに、自治体の再生を考えてみました。蛇足ですが、「分限」という尊徳の言葉には、含蓄があります。分限(現在では市の財政力となるでしょうか)を超える消費をすれば、徐々に貧しくなります。分限を超える浪費は、慎むべきです。分限を理解し、その範囲内での生活を心がけることが、生産能力を発揮し、利潤を獲得することに繋がるというものです。

 日本の公共施設は1970年代に多く造られ、現在は一斉に改修時期を迎えています。人口減少や高齢化の進展に伴い財政が厳しさを増すなか、インフラへのコストの圧縮は欠かせない状況になっています。愛媛県西予市は、施設の再編が遅れていました。それが一因となり、市の貯蓄がほぼ枯渇する財政危機に陥っています。また、徳島県東みよし町は、「改修などで毎年約8億円の財源が不足する」と試算されるまでになりました。施設の維時には、多額の改修費が必要です。危機感を持った自治体では、公共施設の集約を進めてきました。自治体の半数は、役場や学校、公民館などの保有面積を2020~23年度にかけて減らしています。減らした自治体の割合は、50.5%となりました。これは、2016年度から2019年度にかけての40.8%から比べて9.7ポイント上昇しています。公共施設の集約については、総務省が2014年から自治体に促してきたものです。さらに、2017年度からは統廃合事業などの資金を調達できる地方債メニューを用意して、この施策を推進してきました。その地方債メニューは、事業費の最大45%を地方交付税で支援するというものです。

 人口減少が急速に進む地方は、東北地方になります。その東北の自治体では、人口減少に対応して公共施設の集約が進んでいます。秋田県は、東北地方の中でも特に人口減少が進んでいます。秋田市も、将来世代の負担軽減に向け、公共施設の見直しを進めている自治体になります。保有する施設の約7割が老朽化の目安となる築30年を超え、大規模な改修や更新が必要とされています。秋田市は、181の公共施設について公共性や代替性を基に評価を実施しました。そのうち53の施設で集約や複合化を進め、13の施設で廃止や譲渡を調整する方針になったようです。施設の集約や廃止は、市民サービスの低下に繋がります。新しい方針には、市民の理解が不可欠になります。この見直し方針を市民に理解を深めてもらうために、各種のデータを盛り込んだパネル展示を実施しています。東北の各市町村では、公共施設の見直しを加速しています。この見直しにも、各自治体に固有の工夫が見られます。岩手県は財政健全化の視点「公共施設カルテ」をつくり、今後の管理方針を検討しています。岩手県は、公共施設の再編を巡っては、県と市町村との連携が鍵となると考えています。そのモデルが、「いわて盛岡ボールパーク」になります。盛岡市内にある「いわて盛岡ボールパーク」は、かつて老朽化していた県営・市営野球場を集約したものです。この「いわて盛岡ボールパーク」は、スポーツ施設の整備で県と市が共同整備した全国初のモデルになります。

 財政難に陥り、思い切った改革を行った市が相模原市になります。神奈川県の相模原市は、人口が72.5万人の政令指定都市になります。この相模原市は、財政の急速な悪化に見舞われていました。そのために、持続可能な財政を実現するための思い切った改革プランを実施しました。まず、既存の公共施設を徹底的に見直をします。市の27施設について、廃止や民間移管を検討しました。1991年開設で、五輪選手らを輩出した市営アイススケート場も、2027年3月末に廃止する方針を立てました。スケート場の維持費に年間1億5000万円かかり、改修には10億円規模の支出が必要になります。その費用の工面が、できないのです。さらに、相模原市は、各種団体への補助金も66件を見直してきました。敬老祝金の廃止など、助成の縮小や見直しなども行いました。見直しだけでなく、相模原市は、2020年度当初予算で新規事業を原則「凍結」しました。2021年度もほとんど新規事業を実施しない緊縮型の予算編成をおこなったのです。財政危機を前に、徹底した歳出の見直しを進めてきたわけです。もっとも、歳出の削減だけでは、市民へのサービスは低下します。限られた財政の中で、民間の力を利用しつつ街の魅力を高める施策を打ち出すことも行いました。この改革プランを実行する中で、2022年度末には急回復をしています。世界を見渡すと、少ない予算で住民サービスを行っている国もあります。スイスのある村は、村長を含めて職員がパートタイムで働いています。この村役場の施設には、学校のほか企業の入るテナントや広場に面したカフェもあります。テナントとして入っているコンビニは、午前中のみの営業なのです。この村役場は、多くの機能を兼ねています。図書館は、週に一度オープンするだけです。多目的室では、村議会が開かれ9人の議員が集まって議論が行われます。役場で働く公務員も、基本的に4年任期の自由契約制で、賞与や昇給はないのです。彼らも、農業や観光業の副業を持ち、農道や林道の改修や除雪の作業を行うことで、市民は世界一の収入を得ています。

 「平成の大合併」は、行政の効率化を掲げて行われました。でも合弁に際して、今までと同じような行政サービスを住民に行う配慮がありました。その住民への配慮などから、公民館などの集約が進まなかった事例も多かったのです。2004年に1市5町が合併した長崎県五島市には、保健センターなど旧市町に同様の施設が残りました。離島である五島市は、人口が10年前から15%減りました。旧市町に同様の施設が残ったことで、住民1人あたり面積が長崎県平均より7割多かったのです。現在、長崎県五島市は、支所や公民の集約を進めています。現時点までに、施設面積を4%超削減しています。別の建物だった市役所支所と公民館などを、1カ所に集約して面積を減らししています。また、体育館を民間に売却する施策も行っています。市の担当者は、人口減による施設の利用減少に合わせて規模を減らしていくと方針を話しています。削減できる更新費用は、年間約10億円となる見込みとのことです。小さくなっても、機能が残れば住民の不利益にはならないとも話しています。浮いた財源は、雇用や観光消費の底上げに充てる計画になります。行政の無駄を省いて、住民に還元できれば、スイスの村のように裕福な地域になるかもしれません。

 最後になりますが、予算がなければ行政が作り出せば良いという自治体もあります。寿都町は、日本海側の漁業が主産業で、人口は3000人を割り込む過疎の町になります。町長は、風力発電推進市町村全国協議会の会長を務めています。ここでは町営の風力発電が稼ぎ頭で、年間の売電収入は平均7.5億円にもなり、町税収入の2億円強を上回っています。この寿都町は、核の最終処分場調査への応募で有名になりました。町長さんは、未来を見つめて、応募に名乗りをあげたようです。政府の計画では、最終処分場は地上施設で1~2平方キロメートル、地下は、300メートルより深くし、地下施設は6~10平方キロメートルの大規模施設になります。核のごみは、ガラス固化体にされて貯蔵されることになります。ガラス固化体1本の発熱量は、製造直後では約2,300W(20℃の水1リットルを2~3分で100℃のお湯にできる発熱量)になります。ある意味、無限の熱源を得ることができます。原子力発電は、核エネルギーで水を蒸発させ電気を起こします。原子力発電所には、施設を冷却する装置もあります。この冷却装置を地下室のガラス個化体を冷やすこと使用すれば、この施設の余熱を利用することができます。廃熱利用では、データセンターの廃熱で植物工場を運営している企業もあるようです。最終処分場の廃熱を利用して、植物工場や養魚場の運営を行うことが視野に入ります。北海道で20℃の温水を自由に使うことができれば、かなりの作物が作ることができます。利益を上げたいという場合には、植物工場に養魚場を併設するアマエビなどを育てることもできます。エビを育てた温水を、植物工場で利用することもできます。エビの汚物が肥料になる仕組みにしておけば、生態系を乱さないクローズとシステムが完成します。核のゴミの施設を作れば、そこからは継続的に20℃の廃熱がでてくるのです。植物工場と養魚場が、1年中利用できることを意味しています。もちろん、低線量にアレルギーを持つ人は、これらの食物を拒否するでしょう。低線量に偏見を持たない人を対象に、販売することになります。こんなことができれば、楽しい地域になるかもしれません。

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