私事ですが、最近になって犯罪に巻き込まれそうになったことが2度ほどあります。1つは、社会福祉協会の者という方から電話でした。その要件は、「一人暮らしで何か困ったことがありませんか」といものでした。私は一人でないので、どうして一人と分かったのだろうかと考えてしまいました。「どうして一人とわかったのですか」と尋ねると、「社会福祉協会ですから」という回答でした。このあたりで鈍い私も、「ああ、例のオレオレ系か」と気がついたわけです。「それは間違いですよ」といって電話を切りました。それから、社会福祉協議会に電話をしてみました。すると係の方が、福島県に数件不審な電話がありましたが、福島市は私が始めてということでした。情報提供を感謝されて、一件落着になったわけです。もう1つは、地震や台風の直後にやってくる家の修理を押し売りのように行う似非業者との接触でした。東日本大震災の後に、強い地震が起きました。それから数日後に、建設業者らしい若い作業員が訪れて、「お宅の屋根瓦が破損していますよ」と言うのです。下から見ても、分からないのですが、作業員は親方が言うので、間違いないと断言します。その時は、作業員に帰ってもらいました。知り合いの建築業者に調べてもらいました。異常なしという結果でした。しばらくして、少し離れた近所の家で、若い作業員の言葉を信じて屋根の工事を請け負ったということが伝わってきました。聞いてみると、破損をしていないところを、修理したように見せただけということのようでした。人は、災害で不安定になっている心理状態の時に、騙されやすくなります。さらに困ったことは、騙されやすい人の「やられ名簿」なるものが、悪徳業者に出回っていることです。最近は、さらに資産状況まで分かる「やられ名簿」が出回る状況が生まれているようです。今回は、このような悪質な事例に対する備え、特に話題になっている匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)などについての抑止について考えてみました。
警察庁は、2025年のトクリュウが関与した組織犯罪情勢を4月にまとめました。それによると、首都の強盗事件では指示役らが秘匿性の高い通信アプリのグループチャット昨で惰報を共有しています。さらに、秘匿性の高い通信アプリはやりとりを暗号化し、運営会社側のサーバーにも記録が残らないようになっています。情報を暗号化し、メッセージを開いて一定時間後に自動で消きす設定になっています。秘匿性の高い通信アプリのグループチャットを使用しながら、標的となる住宅や事務所の情報を犯罪グループが共有しているのです。事件は、案件屋と指示役、そして実行役の役割分担から始まります。ある事件では、案件屋が金品の所在に関する情報を100万円で買っていました。残念ですが、案件屋が情報を入手する詳しい経路は現在のところ判明していません。この案件を、指示役が買い取ります。お金に困っている実行役に役割を与えて、金品の強奪を行う流れになります。
トクリュウの実態把握の糸口になったのは、2026年になったのは警視庁が逮捕した容疑者らのスマホになります。スマホ解析したところ数の指示役が参加するグループチャットの存在が判明しました。グループチャットでは、「案件屋」が強盗や空き巣の標的に関する情報を提供します。標的となる住宅や事務所の情報の「案件」に、指示役が群がり、実行役を募って犯罪を繰り返す流れになります。案件屋が投稿すると、指示役の「うちでやります」とか、車を出しますとかの反応がでてきます。秘匿性の高い通信アプリのグループチャットを使用しながら、民家の地図情報に住んでいる人数を付記して共有していきます。案件屋が投稿すると、案件を引き取った指示役らがSNSの「闇バイト」などで実行役を勧誘します。案件ごとに、実行役を含む別チャットに誘導し警備の有無や室内の間取りを共有して犯行の計画に移る流れです。案件では、「2000万円」などと見込み示し、指示役が運転や見張りに必要な人員、それぞれの取り分を設定することになります。
オレオレ詐欺の頃は、現在のトクリュウの犯罪に比べると穏やかだったように感じます。最初のころのオレオレ詐欺は、数打ちゃ当たる方式で電話をかけまくったのですが、効率は悪かったようです。彼らも、考える葦です。現金を持っている人びとを知ることができれば、効率良く電話をかけてスムーズに詐欺行為を行うことができると考えました。そこに登場したものが、「やられ名簿」というものです。高額の布団を押し売りに負けて買ったら、この家に高額な浄水器やリフォーム営業が次々来るようになることがあります。ある程度払う金があり「断ることが苦手」な人に対しては、何度でも、どんな手口にも押しかけてきたものです。断ることの苦手な人達の名簿が、出回っているのです。相手が現金を持っており、相手の性格も分かれば、電話による詐欺の効率が良くなる流れになります。悪質訪問販売業者や悪質通販業者、アダルトサイトなどの被害者名簿は、「やられ名簿」として価値が高いものになっていきます。いわゆる名簿屋が、参入してきたのです。名簿には、ターゲットの特徴が書いてあるものもあるようです。やられ名簿には、「暴力耐性なし」とか「断ることができない性格」などと記されたターゲットもいます。現在のトクリュウの犯罪は、やられ名簿に、資産や警備の有無、そして室内の間取りまでの情報を付与して、販売しているようです。
首都圏では、特定の企業や事務所が繰り返し狙われる事件が発生しています。5月に栃木県で起きた強盗殺人事件などトクリュウによる深刻な事件が相次いでいます。新宿の貴金属店事務所は2月に強盗未遂事件の被害に遭い、5月にも強盗予備事が起きました。この新宿の貴金属店事務所では、金塊の取引が予定されていたということです。警視庁は、5月24日に東京都小金井市の民家に強盗に入る男らを強盗予備容疑で現行犯逮捕しました。この民家は、5月中旬に強盗目的とみられる住居侵入が連続して起きていました。警視庁は、同じ現場を複数のグループが何度も狙う結果になったとみています。何らかの経緯で金品があるとの情報が伝わり、異なるープから次々に狙ったと言うわけです。警視庁は、5月の事件では事前に実行役らの動きを察知しました。民家に強盗に入る目的でドライバーを隠し持ったとして、男らを強盗予備容疑で現行犯逮したわけです。案件屋は報酬として現金を確実に回収するため、複数ルートに持ちかける傾向があるようです。それで、同じ民家や宝石店が数度にわたり侵入されるというケースも出てくるようです。多発する事件の発生には、案件屋が暗躍するトクリュウの情報ネットワーウが背景にあるようです。現在のところ、トクリリュウとみられる資金獲得犯罪全体ではリーダー格や指示役の摘発が1割程度にとどまっています。それでも、捜査幹部は除々にトクリュウの情報共有の一端がみえてきたと話しています。その現われが、事前に逮捕するケースが出てきていることです。秘匿性の高い通信の解析や案件屋の情報収集の手口など解析し、摘発につなげてほしいものです。
最後になりますが、日本の犯罪は、驚くほど減少しています。メディアで騒がれているほど、殺人事件はおきていません。少年犯罪も減少しています。でも、少なくなればなったなりに、犯罪はもっと減った方が良いと思うのが人情です。残念ながら、犯罪者はなくなりません。でも、減らすことはできるということです。トクリュウなどが狙う企業や家は、資金のある民家です。日本で、金融資産を5億円以上保有する日本の超富裕層の世帯数は、8.4万世帯と2000年以降最多になっています。また、10万ドル以上の資産を持つ人は、3000万人と言われています。警察には、狙われる企業や民家に関する案件屋の情報(やられ名簿など)や指示役の役割に関する情報、そして実行役のパーソナリティの情報なども、少しずつ蓄積されていようです。とうぜん、データベース化されていくことになります。このデータをAIに学習させて、「分類」や「予測」力を発揮するツールにすることも、犯罪の抑止に繋がることになります。その一端が、5月には事前に実行役らの動きを察知し、強盗に入る目的でドライバーを隠し持ったとして、強盗予備容疑で現行犯逮する事例もあるようです。犯罪を犯す人々の行動パターンやその予測、そして騙されやすい人々の行動パターンとその予測には注意が払われるようになるでしょう。また。だまされにくい人の処方箋の啓蒙も進んでいくようです。今よりも、犯罪の少ない地域を増やしていきたいものです。
