現在、未成年のソーシャルメディア(SNS)依存が世界的な問題になっています。SNS依存は子どものメタルヘルスに悪影響を与え、深刻な社会問桓になっている。米国では、高校生の77%がSNSを利用し、その依存度が高いほどいじめや自殺願望などが増える傾向にあります。米国で米メタなどのSNS企業を相手取った訴訟の公判が、カリフォルニア州で始まっています。訴訟を起こした原告は、米カリフォルニア州在住の20歳の女性になります。彼女は、メタと米グーグルなどを相手取って提訴しました。その理由は、幼い頃、ユーチューブなどに依存し、うつ病になったとして、損害賠償などを求めているのです。彼女は「企業は利用者が中毒になるように意図的にSNSのアルゴリズムを設計している点を強調しています。このような提訴は、1990年代に起きた「たばこ産業」に対する提訴においても見られました。この裁判には、メタのマーク・ザッカーバーグCEOなどのトップも証人として召喚される予定になっています。一般に米国では、利用者の投稿については運営会社の法的責任を原則的に問わない法律があります。いわゆるSNSを運営するプラットフォーム企業に、広範な免責を与える「通信品位法230条」がありました。これまでSNS依存は、家庭や本人の問題として片付けられてきた経緯があります。今回の訴訟の特異な点は、SNSの「設計上の責任」が争点となっていることです。今回は、SNS依存やゲーム依存の視点から最近の問題を考えてみました。
SNS依存やゲーム依存の受診患者の7割が、20歳未満といわれています。ある男性大学生が、ゲームの体験を話しています。彼は、スマホアプリのゲームにのめり込んでいった高佼1年生の頃を振り返ります。「暇つぶしに始めた」ゲームのプレー時間が増え、寝ずに12時間続ける日もありました。ゲームが生活の中心となり、無事に大学生になると、授業への出席もおろそかになります。結果として、1年生で取得した単位はゼロでした。親の監視の目がないこともあって、1週間で30万円ほどを課金に費やしたこともあったのです。この状況が明らかになり、周囲に説得され、3カ月間の入院治療に入りました。退院後も通院しながら、SNS依存やゲームと上手な付き合い方を模索しているとのことです。彼ほど極端でなくとも、ちょっとした時間は勉強するには短すぎるので、スマホしかやることがないという高校生もいます。都内の高校1年の男子生は「寝る前についつい短い動画を見てしまう」と話しています。「学校の課題が嫌で、現実逃避のためにX(旧ツイッターを見てしまう」という中学生もいます。時間溶かすSNS、「気付いたら朝6時」など、スマホ依存は深刻になりつつあります。惰性とも言える消極的な理由からスマホの利用時間が長くなっている実態があります。意図したよりもスマホを長時間使ってしまうとの回答も89%に達した。スマホの利用が原因で予定していた勉強ができない経験のある人は91%に上っています。自分の意思に反して、スマホ使ってしまうという悩みが若者を中心に多くなっているのです。
グーグルやメタそしてX(旧ツイッタ一)などの巨大情報企業は、偽情報対策などのコンテンツ管理を緩めてきた経緯があります。この流れを受けて、AIがつくる偽動画「ディープフェイク」や不適切な投稿がまん延するようになりました。これらのコンテンツ管理を緩めてききた結果、過剰な刺激を求めSNS中毒を招いたとの指摘もあります。メタは2025年に2024年比 8%増の約2600万ドル(約41億円)のロビー活動費に投じています。このロビー活動は、規制を緩めるための活動でした。SNS依存の問題が社会的に指摘されるようになり、サービスを提供する企業のビジネスモデルにもー定の社会的責任を問う動きが出始めました。米国で未成年の保護者などがSNS企業を相手に起こした訴訟は、数千件にのぼるまでになっています。カリフォルニアア州の連邦地裁は、これらの類似の案件を取り扱う「広域係属訴訟」として統合することになりました。蛇足になりますが、広域係属訴訟(MDL: Multidistrict Litigation)は、共通の事実問題を抱える多数の民事訴訟が全米の異なる裁判所で提起された際、効率化のために1つの連邦地方裁判所に事件を集約し、公判前手続(証拠開示など)を併合する米国連邦法の制度になります。主に大規模な不法行為(集団災害、医薬品被害など)で使われ、和解を促進し、裁判の重複を避ける目的があります。この「広域係属訴訟」が、2026年にカリフォルニア地裁で始まることになります。1990年代後半に、米たばこ産業が和解などで巨額の負担や宣伝制限を迫られた訴訟がありました。この裁判は、米たばこ産業が和解などとの類似性も指摘されています。メタの最高財務責任者はこの裁判で「最終的に重大な損失につながる可能性がある」と不安を隠しきれないようです。グーグルやメタそしてX(旧ツイッタ一)などは、訴訟を受けて立つ立場を強調しまいた。でも、動画投稿アプリ「TikTok )」は、この公判前に原告側と和解をしています。
どうして、「TikTok」は、原告側との和解の道を選んだのでしょうか。その選択には、理由があるようです。EUは、全域内でのSNS規制強化に邁進しています。特に、TikTokの依存性のあるデザイを問題視しているようです。刺激的な動画を次々と表示して、動画の閲覧を続けたいという衝動を利用者に与えるデザインに問題視しています。TikTokは、利用者が視聴するコンテンツの好みを読み取り、関連のある動画を勧める機能を取り入れています。動画の閲覧を続けたいという衝動を利用者に与える点を、EUは批判しているのです。EUは、中国発の動画投稿アプリTikTokがデジタル規制法に違反しているとの見解を公表しました。利用者のスマホ依存を強めさせるようなデザイを、問題として捉えたわけです。EUは、依存性の高いデザインを設計したと問題視し、設計変更し更など是正を求めました。さらに、未成年のSNS利用が過剰にならないよう設計への見直しも要求ました。具体的には、SNS利用が過剰にならないように保護者がより管理しやすい設計への見直しを求めたわけです。TikTok側の対応が不十分な場合は、最大でグロール売上高の6%の制裁金を科すと警告までしています。欧州では、SNSの規制論が急速に勢いづいています。TikTokが米国で早々と和解に応じたのは、EUの状況を肌で感じたのかもしれません。
スマホ利用者や企業も、依存症にならない努力やサービスを行っています。依存に歯止めをかける日本発のアプリ「Blockin (ブロッキン)」の利用者が増えています。このブロッキンの累計ダウンロード数は、100万を超えました。ブロッキンの使用状況を見ると、若者が率先して利用を始めているようです。10代のスマホ利用時間は、1日3時間超と5年で3割も増えています。2024年度の10代のモバイ幾器の利用時間は、平日が平均3時間18分で、休日は同4時間18分になります。このブロッキンには、面白い工夫があります。ブロッキンに年齢と1日のスマホ使用時間を入力すると、スマホに費やすかの予想が表示されるのです。1日にスマホを3~4時間使高校生が「18歳未満」の年齢ボタンを選ぶと、21年という数字が出てくるのです。スマホを見続ければ、21年間もスマホを眺めて過ごす人生をこの先送ることになることを警告しているのです。15~19歳の若者が起きている時間の4分の1程度はスマホを見て過ごしている計算になります。膨大な時間がスマホに消えることになるかもしれない重みを実感してもらう狙いがあるようです。さらに興味深いことは、中高生の9割以上が親のすすめではなく、自らブロッキングを使い始めていることです。夜中までSNSを見ているときにブロッキンの広告が流れてきて。危機感を持つようです。ブロッキングが、ダウンロードされる時間は深夜が多いとのことです。
余談になりますが、スマホにあるゲーム依存への対策も進んでいます。ハーバード大学メディカルスクールの心理学部が、テトリスの実験を行いました。実験に参加する学生は、お金をもらってゲームができると大喜びでした。27人の実験協力者に報酬払って、1日に数時間3日間連続でテトリスをやり続けてもらったのです。実験のあとの数々協力者たちの何人かは、空からテトリスの形が降ってくる夢を見続けました。この世のすべてが、テトリスの4つの形でできているようにしか見えなくなるようになったそうです。テトリスをする若者たちは、どこを見てもテトリスの形が見える認識パターンができます。このパターン、いわゆるテトリス効果は、繰り返しゲームをすることによって起こる普通の生理的プロセスなのです。「テトリス効果」は、脳の中で起こるきわめて普通の生理的プロセスと説明されています。これを続ければ、日常生活に支障をきたすことになります。より正しく言えば、支障をきたす人ときたさない人が出てきます。支障をきたさない人を、正のテトリス効果にとらわれた人とします。支障をきたす人を、負のテトリス効果とらわれた人とします。負のテトリス効果にとらわれているとき、人の脳はチャンスを目にすることができません。逆に、脳が常にポジティブな面をスキャンしてテトリス効果に注目すると、恩恵を受けられます。心理学者は脳が幸運に対して常にオープンになっていることを「予測符号化」と呼びます。好ましい結果を予測していると、脳がそれを符号化するのです。幸運に対してオープンになっていると、チャンスに気づき易くなります。要は、ゲームにのめり込んでいる人には、チャンスが来ないということです。チャンスに気づくように脳を鍛えるには、ポジティブなことに注目する時間を持つことが不可欠です。具体的には、時間を1時間と決めて行う行動様式を持つことです。
最後になりますが、スマホ依存が深刻化したことを受け、利用を制限する動きが国内外で広がっています。日本では、自治体の条例で動きが出ています。香川県では、「ネットゲーム依存症対策条例」を設けました。これは、18歳未満のゲーム利用時間を60分(休日は90分)以内とするものです。また、愛知県豊明市は、1日2時間以内に抑えることを促す条例を2025年10月施行しています。勉強や仕事以外のスマホやゲーム機の利用を、2時間以内に抑えることを促しています。豊明市は、スマホの長時間使用が子どもの睡眠不足を助長し、子どもの不登校の一因になっているとしています。一方、オーストラリアでは、2025年12月、世界で初めて16歳未満のSNS 使用を禁止する法律を施行しました。さらに、デンマークのプレデリクセン首相は、2026年にも15歳未満のSNS利用を原則禁止する方針を打ち出しています。プレデリクセン首相は、スマホやSNSが子どもから幼少期を奪っている」と述べています。身体活動を伴う遊びは、子ども達の成長発達に欠かせないと考えています。その成長に必要な時間が、スマホに取られてしまうという危機感があるようです。もっとも、禁止や規制だけでは、スマホの問題点は解消しないと思われます。仮に何らかの利用制限ができたとしても、実効性の担保が課題になります。最近は、勉強中にスマホで調べる学習方法が普及し、スマホを物理均に遠ざけておくのは難しい状況が生まれています。スマホを排除せずに活用するための現実的な賢い工夫が求められるようです。
