ペットの楽しい余生を官民で支援する アイデア広場 その1767

はじめに

 ペット愛好家が、増えています。その要因の1つに、ペットによる癒しの効果があるようです。ネコやイヌなどのペットと触れ合うことで、幸福ホルモンのオキシトシンの分泌量が増えることにあります。イヌなどのペットと触れ合うことは、社会関係力を向上させるうえで大きな意味があるようです。この幸福ホルモンの分泌量が高いほど、良好な社会関係を保てるようになります。オキシトシンは、親しい人と触れ合うことでも分泌されるように、ペットと仲良く過ごすことでもオキシトンンが分泌されます。オキシトンンが分泌されることで、幸福感が享受され、癒しの効果が得られるという流れになります。競争社会やストレス社会において、この幸福ホルモンは良い効果をもたらします。この効果を求める流れが、世界的に急速に進んでいるわけです。今回は、ペットの癒し効果を高まめるモデルを考えてみました。

1 イヌとネコの健康寿命

 ペットの世界にも、変化が起きています。ペットの数では、イヌの数が常に優位に進んできました。それが、ネコに変わられたのです。イヌよりも手がかからないという理由で、ネコを飼う人が増えてきたのです。国内のネコの飼育数は、2014年に842万匹と初めてイヌ(820万匹)を上回りました。2021年は、ネコが894万匹と前年(862万匹)から30万匹も増加しました。2023年には、直近の10年間で最多の906万匹とイヌ(684万匹)との差も222万匹となっているのです。ネコの飼育数は初めて900万匹を超え、さらにその平均寿命も過去最高を記録しています。ネコの平均寿命は、2023年に15.79歳となりました。2010年の平均寿命が14.36歳ですから、から1.43歳伸びて過去最長となったわけです。人間も高齢化社会になると、医療の充実や健康が話題になります。高齢のペットの場合も、医療サービスが課題になるとともに、ビジネスチャンスでもあるという状況が生まれています。

2 新しいペットビジネスの形態

 ペットビジネスの未来は、中国に大きな可能性があるようです。ペットブームが続くなか、家族の一員として一緒に出かけたいという需要を取り込む動きあります。中国では、不動産不況の影響で節約志向が続いています。その中で、ペット関連事業は、消費者の財布の紐が緩みやすい数少ない分野の1になっています。中国で飼われている犬と猫は、2024年に1億2411万匹で2019年と比べて25%も増えています。ペット用品やサービスなどの関連市場は、2024年に3000億元(約6兆5000億円) を越えているのです。たとえば、「ペット友好」をうたうカフェは、ペット連れでも利用できます。その中でも人気のあるお店は、サービスとしてペット用の食器や水を提供するところです。ペットとの外出需要を取り込もうとするのは、外食業界だけではありません。米マリオット・インターナショナルは、中国の一部の系列ホテルでペットプランを発表しています。ペットと一緒に泊まれるサービスを行います。ペット業界では、ペットと飼い主の心を捉える新たなサービス開発競争が今後も続きそうです。

 ファミリーレストランなどでは、お子さまをお待たせしないことがとても大事なこといなります。お金を支払う大人を大切にすることが、当たり前のように思ってしまいます。でも、お子さまが笑っていれば、大人たちも食事を楽しむことができるのです。この流れは、家族の一員になったペットに言えるようです。ペットがお店で、くつろぐ姿や美味しそうに料理を食べる姿は、飼い主に安らぎを与えることになります。乳児の無邪気な笑いは、大人たちを和ませます。同じようにペットの安らぐ姿は、飼い主に満足感をもたらします。ビジネスの分野では、ランチェスターの法則が有名です。この法則は、もともとは軍事戦略の中で研究されてきたものです。敵をすべてまとめて狙うのではなく、うまく部分に分割し、一つの部分だけ狙う戦略です。この理論を、ペットの同伴者に利用するお店もあります。家族連れの場合、お子さんに狙いを絞ったほうが、お客様の満足度が上がり、お店の評価も高くなるというわけです。同じように、ペットの満足が、同伴者の満足になります。

3 愛好家に受け入れられるペットサービス

 ペット産業側にも、人間向けと変わらぬサービスをペット向けに展開する企業が増えつつあるようです。あるペット企業は、人が多く集まる地下街に、「ペットのケアができるアンテナショップ」を開店しました。今までのペットショップは路面店が多く、地下街への出店は異例といわれています。でも、お客の評判は良いようです。ペットの食欲不振を心配した飼い主が、駆け込んで来る光景があります。「うちの子がペットフードを食べてくれないんですよ」と不安な表情で話します。それに対して、「10~15分ほど食べない場合はいったん下げて、時間を置いてから出してあげるといいですよ」とベテラン店員の冷静な対応に飼い主が安心します。相談に随時応じることで、信頼を得て、さらにサービスを強化する良いサイクルを作っています。経験豊かな店員は、飼い主に有益なアドバイスし、時には新しいフードを薦めることもあるようです。このベテランの方に言わせると、「高齢になったペットの健康に気を遣う飼い主が増えている」ということになります。そのアンテナショップには、動物用の酸素カプセルも設置してありました。他にも、老犬向けに車椅子の試乗や貸し出しを行っていました。ペットへの健康意識は、ペット愛好家で高まっています。むしろ、日本や中国は欧米に比べるとやや遅れ気味という状況です。遅れたペット市場状況の中には、新しい課題解決型のビジネスチャンスが数多く見出せるかもしれません。高齢化社会は、シニア向けという新たな市場を生みだしました。人間に限らず、ペット市場においても、ペットの老後が長くなっている状況に応じたサービスが求められています。そして、そこにビジネスチャンスが眠っています。

 中国は、2023年のネコ飼育数が6980万匹と日本の8倍も多いのです。中国でも、ペットのビジネス市場にスタートアップが進出してくるなどネコのペット市場が広がっています。中国国内だけでなく、海外にも進出を始めています。中国企業の中には、高齢化のネコ市場に商機を見いだし。日本に進出してきています。pidan (ピダン、上海市)は、2023年に日本法人を立ちあげました。ピダンは、中国の高級ネコ用品店になります。電子商取引(EC) サイトでも、トイレ用の砂や外出用品などを販売している企業です。ピダンは、2024年2月には大丸東京店(東京)のペット用品店に専用コーナーを設置しました。こうした専用コーナーの設置店は、すでに全国30店補にも上るそうです。ピダンは2026年までに、百貨店やホームセンターなど全国500店舗での取り扱いを目指しています。日本のネコ愛好家のニーズにあった商品を、精力的に開発する姿勢を示しています。日本も、中国に負けているわけではありません。Uaiam (ユニアム、東京・港)は、生鮮キャットフードを開発し、販売する会社になります。この会社は、健康ケアに特化したおやつ4種類を発売しています。おやつ4種類を、初年度で43万個の販売を目指しています。このおやつで、食事と医療の両面でネコの健康を支える狙いをもっています。ユニアムは、「腎臓健康ケア」「腸内環境ケア」など健康ケアに特化したおやつを発売するわけです。たとえば、腸内環境ケアに関しては、腸内の善玉菌を増殖させるというオリゴ糖やビフイス菌をフードに組み入れたおやつを開発しています。

4 ペットの健康を支える医療サービス

 牧畜などの動物だけでなくペットを対象にした獣医の需要が、日本では不足してきています。獣医の必要性が叫ばれてきたにも関わらず、日本は、獣医学部を50数年間にわたって新設してきませんでした。一部地域では、産業関係の獣医師不足が指摘されていました。50年以上も新設されていなければ、不具合もでてきます。でも、新しい獣医師が増えれば、今までの獣医師の既得権が侵されます。故安倍首相は、新しい獣医学部の新設に意欲的でした。でも、既得権を犯される側からすれば、望ましいことではありません。族議員と官僚のタッグは、強力な抵抗勢力として存在しました。結果は、新設が強行されました。新しい獣医学部の新設には、いろいろな裏のお話しもあるようです。でも、1600万匹のネコとイヌの健康を考慮すれば、新しい獣医学部の創設は、動物を愛する人たちと動物たちにはハッピーな出来事でした。

 ペットにお金や時間をかけることを、惜しまない愛好家が増えてきました。そんな愛好家は、ペットの健康や病気にもお金を使うようになっています。お金の消費が増えれば、そこに新しいサービスが生まれ、ビジネスチャンスが生まれます。米国では、ペットビズネスの新しいサービスにオンライン医療が登場しています。遠隔診療サービスの出現には、理由があります。それは、家畜だけでなくペットの獣医が不足していることです。従来の動物病院がペットの増加に伴う活発な需要についていけず、遠隔診療がその不足を埋めているためです。ペット関連市場の活況を受けて、犬や猫などのオンライン診療を手掛ける起業が増えていいます。台頭しつつある起業は、さらに広範なペット向け医療サービスを提供しようと事業を拡大しています。ペット用品のネット通販を手掛ける米チューイーは、オンライン薬局に進出しています。このチューイーは、独自の遠隔診療サービスやペット保険も手掛けています。ペット関連の小売業は、事業を拡大するため、既存のペット向け遠隔診療プラットフォームとの提携や買収に目を向けています。ペットの遠隔診療プラットフォームから得られるデータを活用しながら、健康関連の商品やサービスを展開する企業が増えつつあるようです。

5 ペットの健康を守るサービス

 高齢のネコになれば、建康面の問題が増えますが、ネコの自由きままという特性上、痛みを知ることが難しいのです。ネコには痛みなどを隠す習性があり、飼い主が異変を察知するのは難しいというわけです。さらに、ネコは表情の変化が分かりにくく、飼い主が痛みに気付きにくいということもあります。Carelogy (ケアロジー、東京)は、ネコの表情からで痛みを検知するアプリを手がける会社になります。手術前後など痛みのネコの画像約6000枚から、痛みがあるときの表情をAIが学習しました。それによると、ネコの耳が外側に回転していたりしたら中程度の痛みがあると判断します。一方、耳が正面を向いているときは痛みがないとします。Carelogyは、ネコが痛みを感じているかどうか調べるウェブアプリサービスの提供を始めました。この会社は、ネコが痛みを感じているかどうか調べる「CatsMe! (キャッツミー)を提供しています。このキャッツミーは、累計17万人超が利用し、現在の月間のアクティブユーザーは2~3万人にも及んでいるそうです。ネコの健康、睡眠、そして痛みに科学のメスが入り始めました。その結果、ネコの平均寿命は延びています。

 ペットの健康寿命で重要な要素は、良質な睡眠になります。RABO (ラボ、東京・渋谷) は、AIを使ったネコの首輪型デバイスCatlogを手掛けています。この会社は、首輪型端末でネコの行動を見守るサービス「キャトログ」を行っています。 センサーを搭載した首輪つけて、ネコの睡眠時間などを計測するのです。ラボは6月中をめどに、キャトログにネコの睡眠の質をAIが分析する機能を追加する予定です。AIがあらかじめ、ネコ3万匹の病歴や睡眠時間のデータを学習します。この教科書学習データを基にして、ネコの睡眠時間などを計測し、データと照らし合わせて適切な状態かを判断することになります。AIでネコの表情を分析して、睡眠の質を計測し、高齢ネコの健康に役立てるサービスを行うわけです。睡眠時間に一定の変化があれば、飼い主のスマートナオンに通知することになります。

6 悲しい別れと決別するサービス

 現在、ペット産業で急成長を期待される国は中国になるようです。中国では、若者やシニアの間でペットを飼う人が増えています。上海の工業地帯を再開発した西岸地区では、最近では犬や猫を連れた人の姿が目立つようになりました。この西岸には、「ペット友好店」が集まっています。30代のご夫婦は、西岸の川沿いにあるカフェでコーヒーを飲んでいます。このご夫婦は、銀色の靴を履いた白いマルチーズのフエラーリくんの髪をセットしながら話しを楽しんでいます。でも、犬や猫の平均寿命は、人間の約6分の1の寿命です。飼い主が長年付き添っていけば、ペットの老齢化が進行する姿を見ながら過ごすことになります。長年一緒に暮らしてきたペットの最後を、看取ることは悲しいことです。飼い主が看取りに関わる時間が長くなれば、精神的に落ち込む状態に陥ることになります。ペットを飼っている人は、そうでない人に比べ、うつ病になる方が1.9倍も多いという統計もあるようです。

 ペットとの別れは悲しいものです。でも、この悲しい別れを別の形で阻止できるケースが生まれています。そのケースは、クローンのビジネスになります。中国企業のシノジーンは、2013年にペットのクローンのビジネスを考えつきました。現在は、クローン犬や猫を育てています。この顧客のなかには、ペットが死ぬ前に皮膚組織を採取しておき、死亡後にクローンを注文するようです。愛するペットが死んでも「再会」できるということで、国内外から注文が相次ぐ状況です。飼い主の中には、クローン犬をスペアとして、2匹求める方も多いようです。クローンの価格は、犬が5万ドル(約700万円)で、猫は4万ドルになります。すでに500匹近くが誕生しています。このなかで、犬が全体の3分の2以上を占めています。誕生から約3カ月後に、顧客に引き渡す仕組みです。このようなビジネスも、ペットの増加と共に新たに出現しているようです。

最後に

 人間もペットも年老いれば、いくつかの病状を持つようになり、体力も気力も低下します。そのような状況下にあっても、できるだけ楽しく生きていきたいものです。高齢者の老後施設の中には、良い施設で最後を過ごしたいと願います。その願いをかなえるヒントが、乳幼児の施設にあります。以前、乳幼児施設で成長した子ども達が、心身の発達に遅れが目立ったことに注目が集まりました。感情表出が乏しく、心身の発達がひどく遅れる子らが多いことが社会問題になったのです。日中ぼんやり座っているだけで、感情表出が乏しく心身の発達がひどく遅れる子どもたちの存在です。これは、人員が不足し、子どもたちへの声かけや笑いかけが少ない乳児院や養護施設に起きた問題でした。このような心身の発達がひどく遅れることは、ホスピタリズム(施設病)と呼ばれています。心身の発達がひどく遅れることは、人的刺激の不足によるものでした。これからの高齢者が、高齢者用の施設を選ぶ必要が出た時には、施設病の観点が重要なものになります。施設が、適切な人的刺激を与えてくれるものであるかを確認する必要があります。施設の選択には、ハード面だけではなくソフト面の充実度を考慮することも重要になるわけです。

 ペットのライフステージを人間と同じように、「幼年期・少年期・青年期・壮年期・中年期・高年期」と考えることができるようです。この6つのステージで、「ペットを上手に扱える人材」と設備を持つ市町村があれば、ペット愛好家にとっては頼もしい地域になります。ペット(犬・猫)は、老後にがんなりやすくなります。これを防ぐには、若いうちに避妊や去勢手術が非常に有効な予防策になります。ペットの健康寿命を延ばすアドバスやその処方や処置を、すぐに行ってくれる施設があれば、愛好家にとっては頼もしい地域になります。ペットと愛好家の心理に熟知した獣医やペットの健康支援に熟知した人材がそろっており、ペットが楽しく食事や運動できる施設があれば、この地域にペット愛好家がやってくる可能性が高くなります。日本の子どもは、1400万ですが、イヌとネコのペットは1600万匹になります。このペットと愛好家への安心と健康、そして楽しさをもたらす地域は、動物と人間が常に訪れるディズニーランドのようになるかもしれません。

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