2000年代後半から、増加傾向を見せるようになったシェアリングの流行があります。シェアリングは、空き部屋や自動車など個人の持ち物を他の個人が利用するものです。特に、車は「所有」から「利用」への動きが世界規模で広がっているところです。この流れに乗って、シェアハウスの利用もぼつぼつと出てきました。2019年時点でシェアハウスは全国に5000件ほどあり、部屋数が5万室になっています。その4分の3は、東京にあるようです。この居住者のメリットは、通常の「ひとり暮らし」と比べて家賃が安価に抑えられることがあります。さらに、彼らは、スペックの高いテレビ、冷蔵庫、キッチンを共有できるのです。少ない費用で、贅沢な生活が可能ということです。この発想を進めていくと、便利な地域において、十分に利用されていないスペースなどがあれば、ビジネスチャンスが生まれることになります。コンビニは、米国が発祥の地になりますが、その便利さを発展させてきた国は日本になります。コンビニの空間は、生活のあらゆるインフラがそろっています。そして、夜間には広い駐車場が十分に使われていない状況があります。今回は、この空間の利用について考えてみました。
ローソンは、車中泊サービスを通じて手ごろな価格で気軽に泊まれる環境を整えています。訪日観光客の増加や人件費の高騰などで、客室単価は上昇傾向が続いています。5月の国内ホテルの平均客室単価は2万1795円と前年同月を6.5%上回りました。最近、地方で人気アーティストのイベントなどが開催される際は、近隣の宿泊施設が満室になり、宿泊費が一時的に高騰したりすることも多い状況が生まれています。ローソンは、高騰する国内ホテルの受け皿として、安価な車中泊の需要が見込めると判断しました。現実に、キャンピングカーなどによる車中泊の需要が増加傾向になります。ローソンは、全国に約1万14000の店舗を展開しています。そのうち、車中泊に対応できる十分な広さの駐車場を持つ店舗が3000カ所以上あります。価格は、1泊2500円とある意味格安です。
旅行のニーズがあれば、それをビジネスチャンスにする企業がでてきます。ローソンは、駐車場を使った車中泊サービスを始めると発表した。24時間いつでも飲食物買えるコンビニの特性を生かし、駐車場を新たな収益源にする計画です。サービスの利用には、事前決済が必要になります。この予約は、RVパークの専用サイトで予約を受け付けることになります。ちなみに、RVパークは、日本RV協会が『快適に安心して車中泊が出来る場所』を提供するために定めた条件を満たす車中泊の施設になります。ローソンは、車1台につき駐車場2台分を開放し、キャンピングカーなどの大型車でも止めやすくなるようです。料金は、1泊2500円とし、電源やトイレ、そしてゴミ袋を提供することになります。それ以外の生ゴミは、チェックイン時に渡すレジ袋1枚分のみ捨てられるようにします。チェックインは午後6~9時までとしていましたが、7月以降は午後3~10時までに延ばすことになります。チェックアウト時間も午前9時から午前10時に変更することになりました。ローソンは、2025年に夏に車中泊サービスを千葉県内の7店舗から始めました。このサービスからの知見から、より利用者のニーズに合ったサービスを開発しています。
車中泊する定番の場所は、オートキャンプ場や道の駅になるようです。私事ですが、北海道や長野での車中泊では、お風呂のある道の駅を好んで選んでいました。皆さんの様子を見ていると、リピーターの方も多かったようです。ローソンの実証実験は、2025年7月千葉で近隣に民家の少ない温浴施設がある7店舗を対象に始めました。利用状況みると、2026年5月までの10カ月で数百件の利用がありました。お盆などの大型連休時には、7店舗の平均で9割を超えていたのです。騒音問題や近隣住民とのトラブルもなく、車中泊サービスに十分な需要が見込めると手ごたえを感じたようです。車種を見ると、キャンピングカーで訪れる利用客が多かったようです。大都市圏では、キャンピンカーの保有比率が高い傾向があります。利用者は、大都市圏を出発地として、1~2泊で往復できる地域をドライブしていることが分かりました。ローソンは利用者傾向を把握し、7月17日から埼玉や静岡、愛知の約30店舗でも車中泊サービスを始めます。さらに、千葉県から埼玉県や静岡などに対象店舗を広げて、2026年度内をめどに約70店舗に増やす計画を練っています。
旅行に対するニーズは、非常に高いものがあります。2024年度の日本人国内延べ旅行者数は、5億4千万人でした。それが、2025年は約5億5千万人になります。また、2024年度の一人当たりの国内旅行平均費用は、46,000円程度でした。それが、2025年度には48,000円になりました。旅行する人も増え、旅行に使うお金も増えています。その中には、高いホテル代のお金を使うより、ミニバンや軽自動車による車中泊をしながら、旅行をリーズナブルに楽しみたいと言う人々もいるわけです。お話は少しそれますが、余暇とか遊びというものが、欧米では重視されます。欧米には、余暇や楽しさを享受するための哲学的思考があります。時間のかぎり働くことは、人間の最善の生き方ではないというものです。楽しい生活こそ、最善の生き方だと捉えているところが随所に見られます。バカンスは、1ヶ月程度取るのが当たり前だという生活習慣を確立しています。日本では、お盆やお正月の1週間が限度でしょう。日本人が時間より金を重視する風潮を、欧米社会にはなかなかなじめないようです。彼らは、便利で早くできてしまう余暇活動に高い価値を置いてはいません。本当におもしろいものや楽しいものを求めて、余暇を過ごすのです。欧米の人々は、どうしたら楽しい憩いの場所を提供できるかのノウハウを持っています。日本においても、余暇に関する欧米流のノウハウが蓄積されてくるようになりました。靴がない国に靴の便利さが伝われば、急速に普及するものです。旅行の多様な楽しみが分かるようになれば、個々人のニーズにあった多様な旅のパターンが享受できるようになります。
余談になりますが、最近、アニマルウェルフェア(動物福祉)という言葉を聞くようになりました。特に、欧米では、このことが実際に行われているようです。シンガポールには、旅を楽しむ方が多いようです。その中でも、愛犬を連れて海旅行する人が増えていいます。へレン・チャンさんは、人材開発企業に勤めています。彼は、初の犬連れ海外は2022年、SNS,で情報収集し「ペットに優しい」とされるスイスを選びました。人間と同じようにペットが、旅行するにはいろいろ制約があります。ペットを客室に同乗できる航空会社は限られ、犬種体重で制限もあります。ケージで長時間過ごすことは、犬や猫のペットには苦手で不向きなことになります。でも、スイスでは、キャリーケースなどに入れずにペット同伴でレストランに入れることができました。このことに感動し、3週間のドライブ旅行を愛犬と楽しんだそうです。車中泊では、温泉のある所が楽しみになります。悲しいことですが、イヌやネコは、人間よりも早く亡くなります。ペットも年老いれば、いくつかの病状を持つようになり、体力も低下します。その機能回復の処方箋と設備を持つ地域の旅行も、ペット愛好家には魅力かもしれません。ペットの医療環境を充実した施設が、オートキャンプ場や道の駅の近くにあれば、車中泊を伴うドライブも楽しいものなるかもしれん。
最後になりますが、人類がアフリカを出てから、5~7万年になります。アフリカの森から平原に出たホモ・サピエンスは、世界中に分布するようになりました。人類が安住の地であるアフリカから出て、石器や火の使用などといった能力を発達させていきました。我々の祖先であるホモ・サピエンスは、きわめて移動能力が高く、適応能力が高い生き物でした。多種多様な言語や宗教を生み出し、多彩な生活様式で生存を支えてきました。その中で、人類に特徴的なことがあります。地域は違っても、なにを喜び、なにを哀しむかは、どの国でも似たようなことが多いのです。文化人類学者の分析によると、世界中の神話や物語は30程度のパターンに分類できるそうです。この30のパターンの音楽や身体言語が、本当の喜びや悲しみを表現するものになっているというのです。30のパターンの中には、聴いて心地よい音楽や語り部の話、見て美しいと感じるおしゃれ、そして自分を美しく見せるおしゃれなどが含まれています。ある意味、心地よさや幸福を得るために、ホモ・サピエンスは、異動や土地での生産に励んでいたようです。人間の移動は、新しい知見を獲得することに大きく貢献しました。楽しむ旅もあれば、生きる旅もあるようです。現代の私たちも、楽しみながら生きる旅をできるだけ長くしていきたいものです。
