競馬で儲ける夢の実現に向けて  アイデア広場 その1747

 中央競馬(JRA)は、100円で大人が遊べる数少ないゲームです。この大人のゲームを、楽しんでいる方も多いのです。多くのファンを抱えながら、JRAはその要望に応えようとしています。その要望の中に、強いサラブレッドの育成があります。JRAの豊富な資金をもって世界中の名血を集め、すばらしいサラブレッドを生み育てていることを世界の競馬関係者は評価しています。サラブレッドは、短距離向きの血統になります。短距離に向いている馬は、速筋の割合が多くなります。速筋は、瞬発力を出すことに優れた筋肉です。この速筋の短所は、長い時間にわたって力を出すことができないことです。つまり、長距離には向いていないということになります。人間の陸上競技の短距離選手の場合、速筋と遅筋の割合はおよそ70%と30%と言われています。ちなみに、遅筋の力は弱いのですが、長く運動を続けることができる筋肉になります。長距離選手になると速筋が30%で遅筋が70%となって大きな違いがでてきます。速筋と遅筋の割合をサラブレッドで調べてみると、速筋が87%で遅筋が17%になるのです。いかに、短距離向きで、長距離向きでないかがわかります。このサラブレッドを、訓練によってダービーの2400mにまで走れるようにする仕事が、調教師をはじめ、厩舎関係者の役割になるわけです。調教師の方は、競馬を細かく検証して、各馬のポテンシャルから最善の調教方法を見出だそうと努力しています。最近、このトレーニング方法に加えて、動物心理学の視点から人馬一体でウマの能力を高めようという試みもあるようです。

 ウマやイヌは、ヒトの生活に役立てるために馴(な)れさせ、飼育してきた家畜になります。オオカミを祖先とするイヌ犬の家畜化は、約15,000年以上前に始まったと推定されています。この頃から、人間は、穏やかな性質のイヌを選んできたようです。昔のイヌは、長い鼻にとがった頭蓋骨を持っていました。それが、徐々に丸い頭に大きな目、膨らんだ頬を持つ体形になってきます。眉の内側辺りの筋肉も人間の悲しみや好奇心、喜びに似た表情を作れるようになりました。指示を仰ぐために人間の目や顔によく注意を払うイヌに対して、人間の祖先は報酬を与えてきました。人間は視覚志向型のために、顔の表情に強い感情的反応を持ちます。祖先は、視覚的な合図やどう振る舞うべきかといった指示に従うイヌに対し、報酬を与えてきました。外見も行動も、人間に似た特徴を持つイヌが好まれるようになります。イヌも人間も、イヌと人間の表情に対して同じように反応するようになってきたとも言えるようです。イヌと比べるとウマが家畜化されたのは、4千年ほど前と比較的遅くなります。馬は、草食性で感受性が高く、気性が良くて扱いやす働物でした。気性が良くて扱いやすい動物だったため、ヒトの良きパートナーとなってきています。ここに来て、イヌには遅れていましたが、ウマのこころの研究が2010年代以降、世界で急速に進んでいます。ウマのこころの研究が進み、ウマの豊かなコミュニケーション能力が分かってきたのです。ウマが、ヒトの顔の表情から声色を連想しながらヒトの気持ちを判断することが明らかになりました。この特徴を、騎手が利用できるようになれば面白いことになります。騎手の心を読んで、ウマが騎手の意向を察してレースを運ぶようになるかもしれません。「今はペースが速いから、少し抑えていこう」とか「前の馬の速度が限界になったから、ここからが勝負だ」とかの人馬一体のやり取りが、可能になるかもしれません。

 馬はとても臆病で、小心な動物です。臆病で警戒心が強くなければ、生き延びることができない環境で生存してきたのです。馬は常に近くに捕食者がいないかとか、周囲に気を配って生き延びきた動物でもあります。わずかな危険の兆候も見逃さないために、眼や耳、そして素早く逃げる走力を進化させてきました。視野が約350度とひじょうに広く、自分の真後ろまで見ることができる特徴があります。さらに、両方の耳を独立して前後左右に動かすこともできます。これらはすべて、厳しい自然の中で生きるための能力であったわけです。この習性は、人間に飼いならされた現在でも、サラブレッドの中に残された特質になっているのです。馬の蹄は人間では中指の爪にあたり、馬は4本の中指で立っている動物です。中指4本で、500㎏程度の馬体を支えているわけです。走るときには、2本の中指で秒速15m以上のスピードで500㎏の馬体を運ぶ運動をします。サラブレッドは、オリンピックの100mの金メダリストよりはるかに速いスピードで走る動物でもあるのです。このような厳しい運動をするために、競走馬がレースや調教のために体のどこかに問題を抱えていることが普通のようです。「だましだまし」走らせる場面も、出てくることもあります。

 北海道大学の動物心理学を専門が、2018年、ウマとヒトのコミユニケーションを調べる実験をしました。実験は、ウマにとって親しい人と初対面の人の笑顔や怒った顔の写真を見せることから始まります。次に、笑顔や怒った顔の写真を見せた後、褒めたり叱ったりする声を聞かせました。表情と声色が一致しないとき、ウマは一致する場合より素早く声が聞こえる方を見返すケースが多くなります。また親しい人でー致しないと、一致する場合より長く見つめるケースが増えました。ウマは、ヒトの表情と声色が一致しないことに違和感を抱いていたのです。このような実験から、ウマの豊かなコミュニケーション能力が分かってきました。また、ウマ同士のコミュニケーョンの実験でも、新しい知見が得られています。普段食べられない貴重な餌でも、ウマは独占せずに他のウマに譲るケースがあります。独占せずに譲る傾向は、相手との親しさで強まるらしいことがわかりました。ウマの心理を解明できれば、ウマとヒトが心地よく接する環境の構築につながります。

 動物とヒトとの心理関係の解明は、人間との共存関係が長いイヌにおいて進んでいます。ヒトがペットのイヌに、人間の幼児に対すると同じような愛情を抱くのかを調べる実験をハーバード大学の研究者たちが行いました。この実験は、2歳から10歳までの子どもが少なくとも1人の子どもがいて、イヌを1匹、2年以上飼っている母親を対象に行いました。MRIを使用し、母親の脳の活動を観察するものでした。まず、自分のイヌと子どもを含むさまざまなイヌと子どもの写真を見せることから始まりました。すると、自分の子どもやイヌの写真を見たときに、報酬を促す脳の「扁桃体」が活発になったのです。母親も、自分の子どもとイヌの写真を見たときに、同等の喜びと高揚感を覚えたと報告しています。活発になる効果が、記憶、社会認知、視覚と顔の処理に関わる「海馬」「視床」「紡錘状回」でも見られました。子どもとの関係とイヌとの関係で、母親が体験する感情の大部分が重なり合っていたのです。ただ、報酬に関係している中脳の一部の領域の反応に違いがありました。中脳の一部の領域の反応では、イヌよりも人間の子の写真を見たときに活発に反応していたのです。いくら愛情深い関係でも、イヌは別の種であることを人間の脳が認識していたようです。

 余談になりますが、ペットによる癒しの効果は、経験則から分かっていました。近年はその理由が、明確になりつつあります。自分にとって大切な存在である人の目を見たり、肌に触れるとき、オキシシンが生成されます。オキシトシンは、愛着、愛情、つながりをつかさどるホルモンになります。新生児を抱いたとき、親のオキシトシンの量は上昇し、同じ行動を繰り返し行います。触れ合う行動を繰り返す中で、オキシトシンの放出が続き、子と親の絆が強められます。オキシトシンは、生まれたばかりの子と親が絆を形成するために重要な役割を果たしています。この新生児を抱いたときと同様の現象が、イヌとの関係でも起こるのです。人間もイヌも、見つめ合ったり、遊んだり、話したりするとオキシトシンが急上昇するのです。イヌの名前を呼んだときに、イヌが駆け寄ってきたりすると、飼い主の体はオキシトシンを放出することが分かっています。このようなイヌに見られる関係が、ウマにも見られるようです。北海道大学の静内研究牧場には、北海道和種馬が飼育されています。北海道和種馬は、人懐こい性格の馬です。牧場を訪れると集まってきて、触ってもらいたい、遊んでもらいたいと優先権をめぐってウマたちが喧嘩を始めてしまいます。人が好きで、優先権をめぐってウマたちが喧嘩を始めてしまうこともあるようです。このような状態の時、オキシトシンの分泌を測定すると面白い結果がでるかもしれません。人馬一体の状態が、脳神経レベルで解明されれば、ハッピーなことになります。

 最後になりますが、日本のサラブレッドの育成方法には、目覚ましく進歩を遂げています。でも、その上をいく国も現れています。ドバイの競馬は賞金総額も高く、優れたサラブレッドや調教師が集まっています。そこでは、競走馬を強くする試行錯誤が行われています。ドバイの調教師の管理馬が、香港やドバイのレースで活躍しくいるのです。ドバイの厩舎には、トレーニング用マシンを設置しているところもあります。競走馬専用のトレッドミルで、騎手が騎乗しなくてもトレーニングができるのです。このトレーニングでは、脚元や背中への負担を軽減できます。トレッドミルを使う際、ウマの安全性に関しては専門のスタッフが2名ついて、万全を期しているようです。ある面で、日本の坂路コースやウッドチップコースよりも、サラブレッドの負担を軽くしながら、有酸素能力を高めるトレーニングをしていることになります。このような生理的側面のトレーニンに加え、動物心理学の知見を取り入れたトレーニングもこれからは求められるのかもしれません。騎手が他のウマのペースを判断し、騎乗のウマの走りやすいペースでレースを進め、後半に力を全開することを人馬一体で行うことができれば、必勝態勢ができます。馬券を買う側が、この人馬の関係を極秘裏に知ることができれば、楽しい生活が約束されるかもしれません。

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