医療分野で活躍する未来のAI  アイデア広場 その1734

 人工知能(AI)が、先端分野で使われるようになりました。その一つの分野である医療現場で、使われています。まず、手始めとして、診察の第1段階である問診で使われ始めました。生活習慣などを聞き取って、診断の手掛かりを得るプロセスで「AI問診」の導入が広がっています。今までは、この問診をアンケート用紙で行う病院が多かったようです。でもAIは、アンケート1枚といった既存の問診票では把握できない詳しい症状や背景を深く探り出すようです。Ubie(ユビー、東京・中央)のAI問診は、患者の入力内容に応じて質問を次々と変えて、病状を探っていきます。患者から症状や既往歴、服薬歴、生活習慣などを聞き取って診断の手掛かりを得ています。Ubie は、医療スタートアップになります。この企業は、5万本以上の医学論文を基礎に症状と病気の関連性を解析するアルゴリズムを構築しました。このアルゴリズムで、患者が診察室に入ったときには医師の手元に充実した情報が提供される仕組みを作り出しました。問診の次に行われる検査の領域では、以前からAIが浸透していました。レントゲンや内視鏡の画像、あるいは心電図の波形をAIに解析させることなどがあります。心電図の波形をAIに解析させて、病気をいち早く発見する技術が実用化されています。問診と検査の結果がそろえば病名を診断し、治療法の選択へと進むことになります。この治療法の選択へと進む過程でも、AIが精度を高めています。

 AIの医療進出は、インドなどの発展途上国が先進国になるようです。インドは、オンライン医療が進んでいる国なります。この国では、医師や病院が圧倒的に不足しています。その不足を補うように、スタートアップの企業がAIを使った診療システムを開発したのです。「必要は発明の母」の例え通り、発展途上国での導入が進んでいるようです。利用者は、「喉が痛い」「熱がある」「おなかが痛い」など体調や症状などを選びます。病状を記入する段階から、人工知能(A I) は利用者の症状から病気を推定していきます。さらに進んでいることは、医師を指定できることです。いろいろな症状に対応できる医師の一覧から、患者は診断してもらう医師を選びます。その医師の一覧から、診断してもらう医師を選び、電話やビデオチャットで症状を詳しく伝えていくことになります。AIが専門医を選定し、選ばれた医師が最終的な病気の判断をします。たとえば、首都デリーの患者が、1000km以上離れた産業都市ムンバイのお医者さんを指定することもできるのです。AIの活用で、医師が診る患者数は飛躍的に多くすることができています。このAIを運営している企業は、病院から一定の手数料を得て、利益を上げています。もちろん、多くの患者を診るお医者さんも、収入が増えている状況が生まれています。

 日本では、1990年代以降、病気ごとに最適な検査や治療法をまとめた診療ガイドラインが公開さるようになりました。最適な検査や治療法をまとめた診療ガイドラインが各学会によって作成、公開されてきたのです。このことが、日本の医療水準を高めている要因になります。さらに、医師が経験や知識を増やし、これらが多い医師が名医と呼ばれる傾向がありました。診療ガイドラインは、「医療者の教科書」になっています。AIはこれらのガイドラインを学び、人間の医師が一生かけても経験できない量の症例を学習して分析できるようになりました。AIによる診断は、膨大な症例が土台となっています。AI医療では、すべての患者に「名医」の診断を提供できる可能性が出てきているようです。問診に関しては、AIロボットが待合室の患者に話しかけ、自然な会話から患者の情報を収集できます。自然な会話から患者の情報を収集し、診察室にいる医師に必要な検査を提示することもできます。検査などにおいては、血液検査や検査画像、そして心音などの音声データなどの数値データを統合して分析できるマルチモーダルの導入が出てきています。次に、マルチモーダルAIが、診断結果と治療法を示すことになります。治療の効率は、飛躍的に向上する光景が目の前に来ているようです。

 医療の世界では、治療医学よりも予防医学に重点を置くべきとの意見も出ています。不調の兆しを早期発見できれば、早期治療につながり、健康寿命の延伸につながります。その早期発見や早期治療の環境が整いつつあるのです。病気の予兆やその進行状況を指標化できる健康データをデジタルバイオマーカーと呼びます。スマートフォンやウェアラブル端末の普及に伴い、この健康データを手軽に取得できるようになりました。皮膚に流れる微弱な電流の変化を検知して、心電図を24時間体制で測定する仕組みも開発されています。心電図を24時間体制で測定し、その結果はクラウド上に記録していくこともできます。クラウトに蓄積された呼吸数や心拍などを分析し、異常があればシステムを通じて、該当の個人に知らせることもできます。知らせを受けた個人は、心電図データを提携医がAIシステムを使ってさらに解析し、治療をすることになります。蓄積されたデータから、過去の患者と似た波形などを見つけた場合、AIがアラートを出す仕組みができているわけです。診断や診療を支援するAIシステムは、泰明期から普及期に転換しつつあるようです。

 医療の進歩に伴い、希少疾患や難病の数も増えてきました。以前は、単に風邪で済んでいたものが、インフルエンザAとかB、さらにウイルス性胃腸炎による熱とか病名が増え続けています。特に希少疾患は7000種類あり、専門医でないと診断や治療法の選択が難しい状況が生まれています。種類の増加に伴い専門化が進み、医師の知識や経験に偏りが生じることになっています。誤診も多く、何人もの医師を訪ね歩き、発症から数年後にようやく病名が確定する患者もいるようです。医師の知識や経験に偏りが生じて、必要な治療にアクセスできない患者がいるということです。困ったことがあれば、それを助ける人たちが現れます。Medii(メディ、東京・新宿) は、医師に無料で検索サービス提供しています。この検索サービスは、診断上の疑問点や確認したい点を入力すると、根拠を短時間で提示する優れものです。疑問点や確認したい点を入力すると、生成AIが信頼できる科学的根拠を短時間で提示するのです。ある医師は皮膚の異常で来院した患者の初見に違和感があり、このサービスを利用しました。すると、一般的な膿庖症ではなく指定難病で重症の乾癖(かんせん)という確定診断を得ました。指定難病という確定診断を得て、新薬の投与を速やかに選択できたというお話です。メディのAI検索は、1500人以上の専門医とネットワークで結んでいます。難しい症例について、主治医が匿名チャットで相談できるサービスになっています。

 余談ですが、心理療法は言語表現を通じて患者が自己決定をくだせるように導くものになります。困ったことに、日本も欧米もこの種の患者が年々増えていくという傾向も見られます。専門家の不足が、1つの課題になっているようです。この課題を手っ取り早く解決するツールが、感情AIになっているようです。たとえば、歌舞伎町のホストの約7割が「Chat (チャット) GPT」などの対話型AIを使っています。彼ら・彼女らは、対話型AIに、接客の助言を求めるだけではないようです。仕事のつらさや将来への不安を打ち明け、AIの言葉に慰められているといいます。感情労働は、顧客に好ましい感情を意図的に表現したりすることが求められる接客の仕事になります。今まではイライラを誰かに押しつけるか、自分の中にため込むかの二者択一でした。それが、AIとの対話で感情労働の苦しさを軽減できるという状況が生まれているのです。ある意味、心理療法士にいつでも相談できる機能を、感情AIが行う状況が生まれているようです。現在、働く人々にかかるストレスが過去最悪の水準に達しています。メンタル不調に対する心理的安全性の確保は、今や世界的な課題になっています。マイクロソフトも、この課題に立ち向かっています。もっとも、単独では困難なので、健康サービスを提供する企業とタッグを組んでいます。マイクロソフトは、包括的な支援サービスを提供する新興企業「スプリングヘルス」と提携しました。このスプリングヘルスは、カウンセリングやメンタルへルスを評価するツールなど複数のメニューを用意しています。マイクロソフトによると、開始1週間でスプリングへルスに約4000人も登録したそうです。社員の不調を早期に察知して対策を講じる仕組みは、企業にとっても利点があります。精神的ストレスから生じる不安やうつなどへの予防も、AIが担うようになるのかもしれません。

 最後になりますが、今のAIは医師の仕事を補佐する存在になります。でも、さらに進化が進むと、将来はどうなるのでしょうか。AIが進歩しても、「患者に寄り添う仕事」は人間の医師にしかできないと考えられています。あるフィクションでは、AIの暴走が話題になります。多忙な医師や離れて暮らす家族よりも、いつもそばにいて何時間でも話を聞いてくれるAIがいます。対話型の生成AIに恋愛相談したり、AIと「結婚」したりする人が現れる状況が生まれたと言います。身近な人よりAIのほうが、家族との関係、趣味、経済状態、死生観といった情報収集の能力があります。終末期の過ごし方などは、「AIとの会話の中で、自分の在り方を正しく把握し、行動がとれるようになる」という状況が生まれるかもしれん。それは、人に話せない本音も、AIには話せるかもしれない情況です。AIは、心のやすらぎを与えながらもある日「穏やかに楽になれる方法もあります」と声をかける光景があります。この悪魔のささやきに、抵抗できる理性が残っているか?寄り添い型のAIが、医療や生死の判断に影響を与えることに警鐘を鳴らす内容のフィクションです。フィクションはフィクションとして、あるべき姿は、AIが診断や治療を担い、医師はその判断をもとに患者との対話や調整を担う「ツール」になることのようです。

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