人手不足と空き家対策を同時に解決する知恵  アイデア広場 その1749

 最近の話題は、人手不足に空き家になるようです。たとえば、日本の空き家数は約900万戸と過去最多を更新しています。特に、地方においては、人口減少と高齢化が進み、深刻な状況になっています。そんな中で、空き家と人手不足の問題を上手に解決している自治体もあります。空き家を有効活用の取り組みが、全国に広がっているようです。昭和時代には、人口増加を背景に、公営住宅が大量供給されました。この公営住宅が、相次いで空き家になってきているのです。賢い自治体が、この空き家を有効活用の取り組んでいるわけです。国土交通省の調査では、公営住宅の空き家が全国で5万戸を突破しています。この数字は、過去最悪になります。最悪の数字は、地方では空き家の増加で共益費の出し手が減り、自治会活動が厳しくなっている状況を映し出しています。ある高齢者は、「ここはうば捨て山だから」とか、限界集落だからと言った諦めの声を漏らしています。そのような中で、健闘している自治体が宮崎県や静岡県、そして京都市などになります。今回は、人手不足と空き家の上手な解決策に挑戦してみました。

 公営住宅は本来、住宅の確保が難しい低所得者に安い家賃で供給するのが目的になります。でも、空き家が増加する中で、初期の目的だけの対象者だけでは、空き家が増えていくだけになってしまいます。そこで国は、空き家対策で、国が認定すれば自治体の裁量で空き家を弾力的に活用できるようにしたのです。宮崎県は、この制度を活用しています。温暖な気候と長い日照時間を活かした宮崎の農業は、肉用牛・豚・ブロイラーの畜産と、きゅうり・ピーマン・マンゴーなどの施設園芸に特徴があります。また宮崎県は、全国屈指の「食料供給基地」ともなっています。でも、御多分に漏れず、人手不足と高齢化の波が押し寄せてきています。農業の盛んな宮崎県は、農業協同組合や農業法人の経営者団体とも協定を結びました。農業に従事する技能実習生に、公営住宅の門戸を開いたのです。技能実習生に門戸を開く目的外使用は、「地域対応活用」というものになります。さらに、宮崎市は、2023年度に宮崎大学とも協定を結びました。大学に近い学園木花台団地の空き室を、学生や留学生の寮として貸し出したのです。宮崎市の市営住宅は、間取りが3DKなどの特徴があります。間取りが多く、複数で共有すれば、家賃負担を抑える効果も見込めるのです。市営住宅が、5000戸以上もあります。難点は、昭和期に造られた公営住宅はエレベーターのないものが多く、上層階は高齢者が階段を上るのが大変というものです。でも、若者ならば、家賃が安ければハッピーということになります。宮崎市では、若者に手の届く社宅や寮として活用したいとの要望が増えたことに応えて、2025年度からは活用する企業や法人の公募も始めています。

 宮崎市の池内団地では、農業従事の技能実習牡が活気をもたらしています。 合同会社タコジマファームは、キュウリやイチゴをハウス栽培しています。このタコジマファームが公営住宅を借りています。3室をベトナム人技能実習生の寮とし、3人ずつ暮らしています。1978年ごろ建築の池内団地を、地元の農業法人が活用しているわけです。この空き室を活用する中で、いくつかの喜ばしい状況が生まれてきています。公営住宅が、周辺地域から孤立してしまうと、住む場所として選ばれにくくなります。その地域は、いわゆる若者のいない過疎地という状況が生まれます。高齢化や若者の退去で、自治会の清掃活動などは低調となる傾向がありました。でも、技能実習生出現で、自治会の清掃活動などに一部で活気が戻ってきました。ベトナム人技能実習生全員が、自治会に加入して清掃などにも参加するようになったのです。高齢の自治会役員と、ゴミ収集所で簡単な日本語で挨拶し合うようになりました。高齢者は、花壇の植栽にも参加してくれて活気につながっていると話しています。この地区では、中止している祭りの再開もめざす機運が出てきています。

 留学生が、地域を活性化している事例は、韓国に見られます。韓国政府は、留学生を高校段階から誘致する流れを作っています。地域に早くからなじませ、地域の大切な「人財」として受け入れています。地域住民と深い関係をつくるなかで、韓国語と文化を学び、地方復活の原動力になってもらいと考えています。韓国北東部・江原道にある京東大学校に近い観光水産市場での光景です。屋台で、客を呼びこむ留学生の姿がありました。観光水産市場では、料理を作り、サービスをする留学生の姿が多くみられます。留学生の言葉を借りると、学費と生活費を稼ぎ、ビジネスを学んでいるとポジティブです。韓国には、年間2500万人の観光客が訪れます。その観光地の担い手が高齢化で、消滅の危機にあるとも言われています。地方では、保育園、病院、スーパーマーケットなど、生活に欠かせないインフラも崩壊しつつあります。留学生は、人手不足を補う救世主のような存在になっています。留学生には、ビジネスと韓国語、そして韓国文化が勉強できると「一石三鳥」のメリットがあるとの見方もあります。日本にも、外国人労働者の方が、地域に溶け込む方策が求められています。そのツールとして、空き家と地域の知恵があるのかもしれません。

 移民が提供する労働力で、国が豊かになっている国があります。それが、スペインになります。スペイン国家統計局によると、この国の人口は4944万人になります。人口は5000万人の大台が視野に入り、移民が提供する労働力を背景に経済指標も好調に推移しています。1人当たり国内総生産(GDP)は、今や日本を上回るほどです。スペイン政権は、高齢化と低出生率による労働力不足を移民で補おうとしています。移民制限に傾くドイツや英国とは逆に、積極的な移民受け入れに方向転化をしています。5月には、3年で90万人の非正規移民を合法化する新たな移民政策を導入しました。スパインの出生率は、欧州主要国で最低になります。出生率低下が進む欧州で、スペインの人口が急増している理由が人口の2割になる移民の存在です。国際通貨基金(IMF)によると、スペインの2025年の国内総生産(GDP)成長率は2.9%になります。このGDPは、ドイツの0.2%やフランスの0.7%を上回る数字になります。移民の8割は働いており、農業や建設、飲食などの重要な担い手になっています。移民政策の成功の背景には、スペイン社会に溶け込みやい中南米からの移民の特徴があります。過去の侵略の結果として、スペインと中南米諸国には言語やカトリック信仰という共通点文化的背景があります。この共通点が、中南米移民がスペインで活躍できる下地になっています。面白い点は、移民を専属で雇って自宅で介護してもらう光景があることです。この方式の利点は、介護施設より移民を専属で雇って自宅で介護してもらうほうが安上がりということになります。スペインの住宅街では、移民の介護者に支えられて散歩する高齢者をしばしば見かけるようです。

 余談ですが、アメリカの移民政策を見るまでもなく、外国労働者が増えれば、問題は確実に増えます。単一の対策で、移民の問題が全てなくなるということはありません。問題は必ず起こるという認識で、外国人の労働者を受け入れることになります。たとえば、イギリスの農業にも、人手不足の問題が顕著になっています。欧州連合(EU)離脱で、イギリス農業は人手不足危機に見舞われています。この国の農業は、外国人労働者に大きく依存してきました。必要とされた季節労働者の大半は、まだイギリスへ自由に移動できるEU出身者が占めていたのです。そのイギリスは、EUからの人的移動が制限されました。このままでは、収穫要員が足りなくなることが確実視されています。イギリス在住者の農業労働者が十分に見つけられなければ、作物が収穫されない状況にあります。ある有機野菜生産者は、来年の収穫期に向けた作付面積を400haから150 haにまで減らしてしまいました。またある企業は、季節労働者の受け入れがない限り、タマネギ生産の半分をアフリカのセネガルに移すと公言しています。欧米の先進国の農業を支える人たちは、移民に頼らなければならい現実があるようです。一方で、欧米における移民を排斥する極右政党の伸長も、問題を複雑にしているようです。

 最後になりますが、地域を豊かにするという意味では、日本も負けない村があります。この村が、有名な長野県の下條村です。この村は、国の臨時の交付金を利用して、1億4000万円のプールや武道館を42万円の持ち出しでつくってしまいました。この村が利用したものは、「地域の元気臨時交付金」など国の2つの交付金です。プールの総事業費は1億4千万円でしたが、国からの補助金が2つ合わせて1億円が交付されました。プールの総事業費の残り4千万円は借金になります。でも、残り4000万円は後で国が交付税で補う条件になっていたのです。結果として、村の持ち出したお金が42万円だったというわけです。この村は国の縛りのない交付金や補助金を、積極的に活用しています。縛りがあっても、その縛りが村の求めるものであれば活用もしています。プールや武道館の建設には、縛りがあります。でも、村には必要な施設と考えたのです。交付金や補助金が村の施策とあわなかったら、活用しない姿勢を貫いています。例えば、公営住宅などは、平等に入居させるルールの縛りがあります。過疎化対策として、多くの町村は公営住宅を作り、格安で住居を提供しています。でも、下條村は国の交付金を使った公営住宅を建設しませんでした。自前の資金で、公営住宅を建設したのです。一般住宅の半分の値段で入れる住宅を作りました。消防団に入る人など地域生活に溶け込める人を、選抜しているのです。過疎対策は、人が増えれば良いのではなく、地域に貢献できる人でなければならないという考え方があるのです。これからの過疎対策には、このような合理的な姿勢が必要になるかもしれません。

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