動物の世界では、クジャクのオスの美しさや鳥の美しい声が、優れた子孫を残すことに繋がるとされています。草原の鳥の鳴き声は、森の鳴き声よりも高周波で速いテンポになります。森では低周波の音と甲高いさえずりになります。おそらく、人類も森から草原に出てから、遮るものがない場所で、仲間に情報を効果的に伝達できる声を獲得して行ったのでしょう。多くの歌をうたえるオス鳥はより健康なので、多くのメス鳥から良い印象を獲得しました。あるいは、良い印象を得るために歌のスキル向上の努力をしたのかもしれません。鳥類の発声装置は、鳴管であることが分かりました。鳴管は胸の奥深く、気管が気管支に枝わかれるところに位置していいます。哺乳類の喉頭に相当する鳴管には、弾力性に富む膜があり、その振動によって発声するわけです。特に、ホルモンが増えることにより、繁殖とさえずりの衝動が生起するようです。子孫を残すために、鳥はさえずります。良いさえずりのオスの求めをメスが受け入れるという流れになります。春の鳴き声は、小鳥たちの生存をかけた鳴き声になるわけです。「秋のさえずり」は、何のはたらきもない遊びの表現であるということになりました。鳥は、遊ぶこともできるというわけです。今回は、オスの生存と子孫の繁栄の戦略とAIの融合の新しいパターンを見てみました。
オスの魅力的な求愛の鳴声は、メスを引き付けることは知られていました。最近、オスの魅力的な求愛の鳴声が、人にとっても好ましく感じる傾向があることが分かってきました。米エール大学とカナダのマギル大学などの研究チームが、この求愛の鳴声と鳴声に対する人間の好みを調べたのです。人間が様々な動物の鳴き声に対して、どのような好みを持っているかを調査したわけです。その調査の結果、人間と動物の音に対する好みには、共通する部分があることを発見しました。研究チームはインターネットのゲームを使って、どのような好みを持っているかを調査しました。世界の4000人以上の人に、求愛音と他の音を比較し、どちらを魅力的に感じるかを尋ねまたのです。2つの片方は、動物のメスが好む求愛の鳴き声でした。サルなど異なる16種のオスの2つの求愛音を比較し、どちらを魅力的に感じるかを尋ねたわけです。2つ音では、人間もメスを引き付ける求愛音を選ぶ傾向がみられたのです。音色やリズムなどの美的感性は、これまで考えられていたよりも普遍的である可能性が浮かび上がってきました。
嗅覚は、生きるために不可欠な感覚です。この嗅覚も、求愛の鳴声と同じように、子孫の繁栄に寄与する感覚になります。子孫の繁栄には、オスとメスの出会いを円滑にいく仕組みが大切になります。アジア象のオスとメスは、通常は別々に暮らしています。メスが妊娠可能な時期になると、フェロモンを含んだ尿をまき散らします。オスはその臭いを慕って、やってきます。匂いが空気中に漂って、オスの鼻の粘膜を刺激するのです。匂いに対して、非常に敏感なので、生殖活動が活発になるわけです。これと同様なことが、人間にも当てはまることをある実験で確認されています。この実験は、若い男女をグループ別にレクレーション活動してもらうことから始まります。このレクレーション活動後に、着ていたTシャツの匂いを嗅いでもらったのです。女子学生の中には人によって、好ましい匂いと好ましくない匂いがあることが分かりました。彼女たちは、自分と異なる遺伝子をもつ男子学生の匂いを好ましいと答えたのです。異なる遺伝子とは、臓器移植をするときに免疫拒否反応が起こる程度のものです。これは、遺伝的に遠い遺伝子ということもできます。彼女達は、自分と同じような遺伝子をもつ男子学生の匂いを好まなかったわけです。遺伝的に近い男女の結びつきは、昔ら好ましいものでないことは経験的に分かっていました。このことは、人間の本能でも分かるようです。
話は飛びますが、この本能とAIの能力を組み合わせるとどうなるかを考えてみました。特別な創作能力がない人間でも、生成AIを使えば、質の高いコンテンツを生み出せる時代になりました。創作能力を持っている人間は、その能力と生成AIを組み合わせで、さらに質が高い創作が可能になりました。創作能力と生成AIを組み合わせることで、質の高いコンテンツを、今まで以上のスピードで創作できるのです。それでは、創造性をどのように捉えれば良いのでしょうか。マーガレット・ボーデン(Margaret Boden)は、認知科学および人工知能(AI)の分野における創造性研究の第一人者です。彼女は、創造性を3つのタイプに分類したことで知られています。それは、組み合わせ的創造性(Combination-Creativity)、探索的創造性(Exploratory-Creativity)、革新的創造性(Transformational- Creativity)の3つです。組み合わせ的創造性は、既序のアイデアや知識の紅み合わせで、新しいものを生み出します。探索的創造性は、既存のアイデアや知識をなんらかルールや手続きで深索し、新しいものを生み出します。そして、革新的創造性は、既存のアイデアや知識の枠を飛び越えて完全に新しいものを生み出します。生成AIは明らかに組み合わせ的創造性、探索的創造性の2 つの「創造性」持っています。AIよって、初めて成立する文化コンテンツが生まれています。でも、革新的創造性に関しては、AIは手探りの状態です。ここに、嗅覚や聴覚などの要素が入ってくれば、革新的創造性に近づける可能性が出てくるかもしれません。
現在の画像生成AIは、文章でこんな絵とか画像を生成してほしいと指示すると画像生成を行います。画像生成AIに、「最高品質で」というプロンプトを含めることで、出力される画像が高品質になります。指示の希望通りに、プロ顔負けのイラストや本物の写真と見分けのつかない画像を生成する状況が生まれています。生成AIから出力を得るために人間が入力する指示文は、プロンプトと呼ばれています。生成AIの出力は、このプロンプト次第で大きく変わることが研究から明らかになっています。同じ回答を要求する場合でも、プロンプトを工夫するだけで出力がまったく違ってきます。現在の画像生成AIは、単にーから画像を生成するだけではありません。すでに存在ある画像を、一部編集したりすることできます。現在の画像生成AIは、すでに存在る画像を希望の内容に変換することもできるのです。言語生成AIだけでなく画象や音の生成AIも含め、生成AIの出力はこのプロント次第です。人間の好む求愛の鳴声を音の生成AIに学習させ、婚活に活用することも面白いかもしれません
余談になりますが、人間の結婚までのお付き合いは、一般的に「出会い・交際」から「プロポーズ」、そして「婚約期間(準備)」を経て「入籍・結婚式」というステップを踏むのとが今までは一般的でした。動物の世界でも、このような手順はあるようです。長崎大学の研究グループは、クロメバルのオスが求愛行動を研究しています。オスは求愛行動の初期段階において、メスに近づいて音を発していました。何度か、音を発する行動をとって、最後にメスの鼻先で放尿することが分かったのです。研究グループは、クロメバルのオスが求愛行動でメスの鼻先に放尿することを確認しました。淡水魚については、尿を介してフェロモンを放出する魚がいることが知られていました。海水魚では、尿にフェロモンの伝達媒体としての機能はないというのが通説だったのです。尿を使った求愛行動が確認されたのは、海水魚では初めてという成果でした。さらに、興味深いことも分かりました。尿は生理状態を伝えるだけでなく、オスの社会的地位を示す信号としても働いているのです。社会的地位が高い個体では、精巣とぼうこうが発達していたのです。この個体は、尿を保持できる量が多いことが分分かりました。クロメバルのオスは、精巣とぼうこうが発達を明示して、メスにアピールしていたわけです。
最後になりますが。人間の話す言語の起源は、歌と踊りにあるとされます。歌のフレーズや踊りの手順が、文を構成し、だんだんと言語に不可欠な文法構造ができたようです。日本には、各地特有の田植え歌があります。この歌を作業中に行うと、集団の能率が上がりました。集団の生産性があがれば、個々のメンバーの利益も増えることになります。稲作のように、集団の力を集中しなければならないときには、凝集力が求められます。この力をもたらすものが、田植え歌だったわけです。長調でつくられた歌ならば幸福感をもたらし、短調の旋律であれば悲しくなります。作業を効率的に行う歌は、幸福感をもたらす、リズムカルなものになるようです。現在は、チームによる創造的作業が注目されるようになりました。特に、異質の人材で構成されたチームは、ブレイクスルーをもたらす成果を上げることがあります。このようなチームの士気やモチベーションを高める音楽や香りの要素に加え、AIの創作能力を利用する仕組みを取り入れてはどうでしょうか。
