日本の労働市場には、課題が多くあります。その一つに、人手不足があります。もちろん、課題があれば、それを解決する工夫が生まれます。男は外で働き女性は家庭を守るという日本の生活パターンは、徐々に崩れていきます。男女共働きになり、労働力の確保に貢献しました。それでも足りなくなり、高齢者が定年後も働くパターンも定着しました。さらに不足が顕著になり、現在では外国人労働者が、救世主のようになりつつあります。人手を確保できないために、黒字倒産という企業も現れています。課題を解決すれば、その上にさらに課題が生じるという現象もでてきます。外国労働者が増えれば、増えたなりに、問題も確実に増えてきます。単一の対策で、問題が全てなくなるということはありません。問題が必ず起こるという認識で、外国人の労働者を受け入れることになります。外国人労働者の多い自治体や企業では、すでに独自の仕組みを構築しています。例えば、外国人の方が困ることは、病気です。病気になり、病状を説明する場合、患者も医者も言葉の問題が出てきます。そこで、日本語の分かる母国の方が、安い料金で通訳を引き受けている方もいます。医療の現場で、言葉による意思疎通が可能になれば、その地域は外国人労働者が働きやすく住みやすい場所になります。医療通訳の存在は、大きな意味を持っているわけです。企業においても、いろいろな工夫を重ねています。今回は、外国人労働者が安心して働ける企業が、どのような工夫をしているのかを探ってみました。
スクーデリア(福島県郡山)は、ネパール人に特化した人材派遣を手掛ける企業になります。この会社は、常時600人ほどの人材を各企業に派遣しています。特徴的なことは、600人のうち約400人がネパール国籍の方という点です。現在の派遣先は、食品工場や倉庫、施設など約30社になります。ネパールの方が、人手不足に悩む製造業の生産を支えています。ある工場では、正月やお盆に10人以上欠員が出るなど人材確保が課題になっていました。一方、ネパール人留学生は、日本語学校が休みの間、働いて学資や生活費を稼ぎたいと考えていました。スクーデリアのネパール人社員は、このマッチングサービスをしています。ネパール人社員が、ネパール人コミュニティーとの調整を行い、その上で人材のリクルートをしているのです。スクーデリアは、来日間もない留学生が銀行口座を開設する際に、社員が同行して支援するなどの活動をしていました。また、日本の生活に慣れたスクーデリアのネパール人社員が、派遣先の工場に同行し通訳を担う独自の仕組みを実現しています。正月やお盆の工場での人手不足、休みにおける留学生のパートのマッチングがウインウインの関係を作り出しました。最近では適切な就労管理も評価され、日本語学校から留学生の紹介を受けることも増えきたとのことです。
2025年度、企業の人手不足倒産は、全国で441件発生し過去最多を更新しました。働く人の確保と継続して働く環境の整備は、喫緊の課題になっています。これらの課題は、日本人だけでなく外国人労働者についても同様です。人口減少が急速に進む中、外国人材が活躍しやすい環境の整備は全国共通の課題になっています。スクーデリアが人材を派遣している食品製造工場では、パートを中心に常時40人ほどが働いています。ここに派遣されるネパールの留学生は、「サキガケ」と呼ぶ独自の派遣方法が採用されています。スクーデリアでは、留学生らを主に4~7人のユニット派遣をしています。派遣の際の送り迎えや派遣先での通訳を、スクーデリアのネパール人社員が担当しています。ある食品製造工場の工場長は、作業のニュアンスまで通訳してくれるため、日本人従業員との人間関係が良好になったとよろこんでします。ネパール人社員が生産ラインに入り細かな業務の指示を伝えることも多く、派遣先の工場の負担を減らしてきたことも評価されているようです。さらに、留学生もネパール人社員を頼みとしています。「作業に間違いがないかなど確認したいことを伝えてもらえるので安心して働ける」と安心して働けることに、留学生も満足しているようです。ネパール人社員は、留学生らの確保や派遣先で円滑なコミュニケーションを支えています。日本のものづくりの中で、「通訳」を担う人材(ここではネパール人)の登用は、企業の強みとなっています。
人手不足も問題ですが、離職する人が多いことも問題になります。就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が38.4%(新規大学卒就職者は34.9%)となっています。でも、職種によっては、もっと高い離職率の職場もあります。「宿泊業や飲食サービス業」は、業種別でも最も人材の出入りが激しい職種になります。「宿泊業、飲食サービス業」は、入社3年以内に高卒の65.1%が辞めています。そんな中で、特筆する企業が、仙台市を地盤に飲食店を運営する「エムシス」になります。エムシスは「焼きとん」やギョーザが名物の飲食店を運営しています。2022年7月以降41人が入社し、退社は5人なのです。飲食業としては、非常に低い離職率になります。その工夫は、2つあるようです。エムシスは22年7月に初任給を27万円から30万円に引き上げた。仙台でも30万円は、高い給料になります。そこにもう一つの工夫が付け加わります。エムシスは、社員から友人や知人を紹介してもらう「リファラル採用」を採用しています。この仕組みは、社員が社員の友達を積極的に勧誘することです。社員の友人を採用することで、人材会社に払う採用関連費用を抑え、初任給の原資を捻出しているのです。採用される新人も友達が一緒に働いているので、心理的安全が確保されると言うメリットが生じています。外国人の場合も身近に仲間いること、そして安心できるリーダーの存在は、職場への定着をスムーズにする要因になるようです
もう一つの視点は、慣れない日本のものづくりの理解とそのスキルの獲得に関することです。このスキルの獲得のヒントは、福農連携の中に見ることができます。障害者(外国人)も働いて、生活のための収入を稼ぐ仕事をしなければならない時代になりつつあります。ある試算によると、障害者が地方で自立した生活を送るためには最低月11万円は必要になります。そこで、鹿児島のあるリーダーは試行錯誤を重ねながら、この稼ぐ仕組みを作り出したのです。障害者年金の7万円と障害者が働いて4万円を、獲得出来る仕組みを作ったわけです。障害者の自立を支援する職員には、20万の給料が国から入ってきます。この職員が自分の給料20万円を、5人の障害者に4万円ずつ分けると11万円になります。そして、職員と5人の障害者が一緒になって20万円を稼げばよいと考えたのです。このリーダー兼の職員と障害者がワンチームとなって、農業で一緒に月20万円の収益を目指していく仕組みを発展させました。これは、職員1人で5人の障害者を自立させる仕組みでもあったのです。ここで行われている障害者が取り組む作業は、種まきや草取り、収穫運搬などさまざまです。それぞれが、自分のできることを行い、できないことがあればできる人がそれを補ったり、教えたりするようにしています。基本は、障害者の目線ですべての作業工程を見直すことでした。作業工程を見直すことで、経験、身体能力、年齢に関わらず、誰にでもできる作業にしていったのです。職員と障害者が一緒に農業をやることで、成果を上げることができるようになりました。一緒に農業をやることで、障害者一人だけではできない領域の作業や事業もできるようになりました。障害者も自らの努力によって自立できるし、そうするべきだという考え方が働く中で形成されていったのです。このようなグループによる作業により、外国人労働者のスキルを向上させ、所得も向上させる仕組みがあれば、楽しい派遣労働になるかもしれません。
余談になりますが、以前は、日本を選ぶ外国人労働者が多い状況がありました、現在は、フィリピンやインドネシアの人びとが、日本や韓国、そして台湾に出稼ぎに行きます。当然、彼らは日本や韓国、そして台湾との待遇を比較しています。日本企業もかれらの行動様式を学習するようになります。学習の成果を得た企業は、彼らが働きやすい職場環境を整え、大きな戦力として活用しています。異なる文化への適応能力、外国への理解などは、日本人も常日頃から蓄積していくことが求められます。意欲的に働いてもらうには、貴重な人材として待遇を改善していくことが、現実的選択だということが明らかになりつつあるようです。知恵ある企業や自治体は、外国人が働きやすい環境を整えていきます。医療通訳の配置などは、その初歩的配慮になります。地域の生活を安心安全に暮らすことができるリーダーを育てておくことも大切になります。
最後は、日本に在留するネパール人の急増の中のビジネスチャンスです。急増の理由は、日本がオーストラリアなどと比較して留学費用が安いことが1つです。もう1つは、学費を稼ぎながら就労が認められていることにあるようです。留学生の数はベトナム人を上回り、中国人に次ぐ2位に浮上しています。国内に暮らすネパール人は2025年末時点で30万人を超え、10年間で5倍に急増しているのです。東北6県に限れば、若者を中心に約7000人が暮らしています。この東北では、急速に進む人口減少を背景に人手不足が深刻化しています。人材派遣業でも派遣社員の競争が激化し、需要に応えられなくなる企業も増えています。そんな中で、スクーデリアが着目したのが、ネパールの留学生でした。そして、その留学生を支援したのが、日本に慣れたネパール社員でした。安心して働ける条件を整える企業が、勝ち組になるのかもしれません。
