豆なしコーヒーが生活を豊かにする  アイデア広場 その1795

 コーヒー愛好家には、困った事態が起きています。世界で流通するコーヒー豆は、アラビカ種とロブスタ種が99%以上を占めています。このアラビカ種とロブスタ種のどちらの価格も高騰しているのです。コーヒー豆の主産地は、「コーヒーベルト」と呼ばれる熱帯や亜熱帯になります。アラビカ種の最大生産国は、ブラジルになります。ロブスタ種は、ベトナムになります。その中でも、最大生産国のブラジルの干ばつやファンドによる投機資金の流入の繰り返しで、上昇と下落を繰り返しながらも、高止まりの方向に流れています。近年の価格高騰の主因は、異常気象による作物被害によるブラジルやべトナムの供給懸念が強くなっていることです。温暖化で、2050年までに豆の産地が世界で半滅する恐れが強まっているのです。専門家による指摘は、温暖化による干ばつや害虫の被害拡大が主なものになります。気候変動が、コーヒーの生産減少をもたらすと業界全体で心配しているわけです。もう一つの要素は、コーヒー愛好家の増加です。米農務省の統計によると、中国の消費量は過去5年間で4割以上も増えているのです。所得上昇や人口増加が進むアジア諸国では、コーヒー文化が浸透してきています。供給が減っても、需要は増えることの影響が顕在し始めているわけです。今回は、コーヒー愛好家が安心してコーヒータイムを楽しめる時間と空間について考えてみました。

 豊かな香りと酸味が特徴で、喫茶店が使っているのは主にアラビカ種です。でも、このアラビカ種は、霜や病害に弱く、栽培には手間がかかる繊細な豆になります。一方、ロブスタ種はアラビカ種に比べ病害に強く、標高が低い土地でも育ちます。一般にアラビカ種が高級品で、ロブスタ種が汎用品とされています。ロブスタ種は、苦みが強く、インスタントコーヒーなどに多く使われています。アラビカ種は、カフェなどのコーヒーで用いられています。最近では、カフェで「シングルオリジン」を提供する店も増えてきています。シングルオリジンは、ストレートコーヒーと似ています。ストレートコーヒーは、マウンテン、キリマンジャロといった産地や銘柄を記すものです。一方、シングルオリジンは、文字どおりー種類のコーヒー豆を使うものになります。シングルオリジンの定義は、誰が(どの国のどんな農園で)、いつ作ったかがわかる豆をさすことになります。たとえば、「グアテマラのセバスチャン農園」といったように生産国、生産地、農園名が記されているものになります。面白いことに、シングルオリジンの中には希少性は高いのですが、昧はいま一つという豆もあるようです。それでも、コーヒー愛好家は、この飲み物を愛飲したいようです。たとえば、ゲイシャというコーヒーの品種があります。この品種は、世界で最も高価なコーヒーのひとつとされているものです。この「ゲイシャ」という名は、エチオピアにある原産地の地名に由来しています。(日本の芸者さんではありません)この一杯のコーヒーを楽しむために、3万円を惜しげもなく使う人たちもいるわけです。

 コーヒーの世界的需要が増えて、供給が追着かない場合、深刻な問題が生じます。問題が生じれば、それを解決する人々が現れます。この解決では、コーヒー生産者の生活を安定させる仕組みが大切になります。農家の人が貧しければ、コーヒーの生産は不安になります。コーヒー生産者の安定した収入は、愛好家が美味しいコーヒーをいつまでも享受できる基礎になります。でも、度重なる異常気象による作物被害により、コーヒー農家の収入は不安定になっています。こんな課題に挑戦している組織の一つが、「WCR」(World Coffee Research、ワールド・コーヒー・リサーチ)になります。WCRは、世界のコーヒー産業を支える非営利の研究機関です。WCRは、世界各国から品質に優れたアラビカ種を本部に集めて培養し、繁殖させています。そして、繁殖させたものを各国の生産地で試験栽培しています。試験栽培の中で得た知見を、気候変動対策や栽培技術として提供しています。たとえば、キーコーヒーはWCR協力して、インドネシアの直営農園で気候変動や病害に強い品種の発掘をおこなっています。このWCRの技術提供は、世界のコーヒー豆市場にも良い影響を与えているようです。またUCCは、国際農業開発基金(IFAD)や丸紅と連携して、タンザニアで小規模コーヒー農家の技術支援に取り組んでいます。これらの試みは、品質の向上や生産量を上げることを通して、コーヒー農家の安定収入につなげる狙いがあります。

 一方で、どうしてもコーヒー豆が安定して確保できないケースも生じます。そんな課題に挑戦する企業が現れました。国内飲料最大手のコカ・コーラグループが、今秋以降、コーヒー豆を使わない、「豆なしコーヒー」に参入すると発表しました。コカ・コーラグループはで豆なしコーヒー「CAFEWATER (カフェウォーター)」を発売します。カフェウォーターは、トウモロコシ由来の食物繊維を使います。コカ・コーラが、豆なしコーヒーの投入するのは日本が初めてになります。カフェウォーターは「水のように飲めるのに、コーヒーらしいコクが感じられる」という特徴を持つとのことです。コーヒーの強みであるカフェインや苦味、渋昧を抑えことを強調しています。香り成分と甘味や苦味、そして酸味などの風味を生み出す呈昧(ていみ)を組み合わせて、コーヒーの昧を再現したものです。市場では、「豆なしコーヒー」が定着し、市場で大ムープメントを起こすのかが話題になっています。その話題の下地は、発泡酒や第三のビールにあります。ビール系飲料では、かつて酒税を抑えるため麦芽比率を下げた発泡酒や第三のビールが登場しまいた。ビールの代替として麦芽比率を下げた発泡酒第三のビールが、今は市場を謳歌しています。原材料が安定して調達できて、美味しいコーヒーのような香りと味覚が楽しめれば、ビール市場での発泡酒のような位置を確保できるかもしれません。

 コーヒーが、愛される要因にカフェインがあります。カフェインは適量であれば、集中力アップや疲労軽減に役立ちますある方は、コーヒータイムの時にアイデアが出ると言います。これを注意深く見ていくと、面白いことが分かります。コーヒーのカフェインは、睡眠物質であるアデノシンを抑制する作用があります。コーヒーは、脳内物質を抑制し覚醒効果と集中力を高める効果があるわけです。社内のコーヒータイム(課題解決に集中している緊張状態の時)に、仲間との何気ない会話(課題解決のヒントに触れる瞬間)に、コーヒーの覚醒効果とが相乗的に反応し、アイデアが生まれるという現象が生じることもあるわけです。一方で、過剰に摂取すると、不眠や心拍数の増加などを引き起こすこともあります。世界の研究では、短い睡眠時間が集中を妨げ、生産性を下げるという報告が主流になっています。2020年の日本人の平均睡眠時間は6時間22分と14カ国中最下位になります。さらに日本の就業者1人あたりの労働生産性は、7万8655ドルと38カ国の中で28位と低い位置にあります。就業者1人あたりの労働生産性は、主要7カ国(G7) で見れば最下位になっているのです。この睡眠不足を引き起こす要因に、カフェインが関与しているという説です。これには、夜は飲まないという習慣ができていれば良いようです。

 余談になりますが、コーヒー愛好家の女性が妊娠した場合、カフェインのリスクが生じます。妊娠中に過剰なカフェインを摂取すると、胎児の発達障害などに関わる可能性がでてきます。こんな心配を払しょくするコーヒーが、ストーリーラインのデカフェになります。ストーリーラインは、沖縄の企業で、優れた「コーヒーテック」の技術を持つ会社になります。コーヒーテックとは、コーヒーに関する技術や栽培・加工などの革新的な取り組みをすることです。たとえば、ストーリーラインは、カフェインを除いた「デカフェ」のコーヒー豆を製造しています。この起業は、東北大学と共に研究してきました。その内容は、熱と圧力を加えてC02を気体と液体の中間の状態にして耐圧容器の中で生豆に触れさせます。すると、少量の水とC02で、短時間のうちにカフェインを分離できるというものです。カフェインの心配がなくなれば、妊娠・産後の人でも気にせずに飲めるデカフェのコーヒーとなるわけです。このコーヒーは、世界で人気が高まっています。ストーリーラインは、豆の産地であるルワンダで加工することにしています。ルワンダの生産者が、この豆で収益を上げれば、コーヒーの安定供給につながることになります。

 最後になりますが、豆なしコーヒーで先行するのが米国になります。2019年に創業した食品ベンチャ一のアトモ・コーヒーは、豆なしコーヒーを発売しています。この会社は、世界に先駆けて、豆を使わないエスプレッソ用粉末を発売しました。このコーヒーは、農業廃棄物を原料に使い、カフェインは緑茶から抽出したものを加えています。発売したものの、ビールの代替である発泡酒や第三のビールのような勢いはないようです。豆なしコーヒーの普及で重要なことは、飲む人々に付加価値を理解してもらうことになるようです。たとえば、発泡酒であれば、糖質ゼロとか尿酸ゼロの付加価値は健康志向の高い人に受け入れられました。豆なしコーヒーにも、このような付加価値を具現化したいものです。できれば、集中力が高まり、アイデアは自由に出てきて、さらに健康を享受できるなどの生活が、コーヒーを飲みながら実現するというストーリーが理想かもしれません。

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