空き家と耕作放棄地を賢く再利用する工夫 アイデア広場 その1796

 現在の日本では、空き家も耕作放棄地も増えています。問題があれば、何とかしなければと課題に挑戦する人もいます。今回は、この2つの問題の類似性を考慮しながら、その再利用方法を考えてみました。2023年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は900万戸になります。その中で、賃貸・売却用や別荘用を除いた「その他空き家」は386万戸になりました。この386万戸は、1993年の2.6倍になっているのです。さらに心配なことは、「その他空き家」が、2043年には2023年の1.5倍の597万戸に増えると推定されることです。貸家やマンションが高騰する中の東京や大阪でも、この傾向は続くようです。この空き家を有効に使いたいと願う人は、都市部には特に多いのです。ちなみに、「その他空き家」は、2043年に東京都で1.7倍の36万戸、大阪府では1.9倍の43万戸になると推定されています。このような状況の中で、都市部の自治体には、「空き家税」の導入に動き出しているところがあります。2022年には、京都市が全国初となる条例案を市議会に提出して可決されたのです。京都市は、全国初となる「空き家税」の条例案が2023年に総務相の同意を得ることになりました。もっとも、最初の試みでシステム開発の影響で遅れ、実施が2030年度に課税を始めることになるようです。この「空き家税」は、所有者の負担を増やすことで、塩漬になっている空き家の流通を促進させる狙いがあります。

 空き家が増えるには、それ相応の理由があります。空き家の所有者は、そこに住んでいないにも関わらず、既に一定のコストを負担してします。空き家を持っている人は、固定資産税の他に光熱水費、火災保険料を払っています。また、マンション所有者ならば、管理費や修繕立金もかかります。もちろん、光熱や水道、保険料は不要と考える人もいます。でも、電気や水道を止めたら片付けもできない状況が生まれます。一定の負担をしながらも、空き家を塩漬けにしている事情があるのです。空き家の約6割は相続で取得されたもので、親族で共有しているケースもあります。親族で共有している場合、売却するには原則全員の同意が必要で、手続きは煩雑になります。この煩雑さが嫌で、塩漬けになるケースもあるのです。もし、一定のコスト負担と煩雑さより、税の現実の方が厳しいことになれば、塩漬けを解消する行動を取るのではないかと京都市は考えています。空き家の処分に向けて手続きをするなどの労力と比べて、税のほうが厳しいという損得勘定が人を動かすという説(性悪説)になるようです。もっとも、京都市は、税を厳しくしたからといって、当初の計画がスムーズにいくとは考えていなしようです。空き家税を新設した場合、対象者から徴税をする費用を1年目が6億円と見積もっています。次の年度でも、年間で2億円かかると試算しています。空き家税を導入すると、居住実態の現地調査など自治体の負担も増えるという側面もあるのです。

 京都市は、若年層や子育て世代が市外に流出する要因の1つが住宅問題だと考えています。家と職場が近い環境は、職住近接と言います。この状態は、通勤ストレスの軽減や可処分時間の増加をもたらします。また、子育て世代にとっては、家族間で有意義な時間を過ごすことができます。このような住環境が整えば、京都市は住みやすい町として若者を集めることができます。税の対象は、京都市街化区域にある約15000戸と、別荘またはセカンドハウスの2000戸になります。「空き家や別荘の利活用を促すのが新しい税金」と説明し、年9億円程度の税収を見込んでいます。京都市の場恰、固定資産税額の半額程度になるようです。おおよそ、築40年の分譲マンションの空き住戸で、床面積60平方メートルの場合、固定資産税5万円になります。このマンションの場合、固定資産税に2万5000円が加算されることになります。京都に続いて、大阪府寝屋川市も「空き家流通促進税」を導入するために、市議会に条例案を提出しています。この市は、2029年度からの課税を目指しています。新税の理由は、若い世代に来てもらいたいが、住宅開発できる場所が少ないことがあります。空き家はあるのですが、塩漬けになり、売却や賃貸が進まないのです。「空き家税」の導入で、この促進を図りたい狙いがあります。寝屋川市の場合、固定資産頒の3~4割程度と京都市より低めとなります。「空き家税」は、住宅需要がある市街地などでは売却や賃貸の促進がー定程度期待できるとみられています。この新税は、所有者の行動変容につながるかの実験的な試みになるようです。

 空き家の増加と似たような状況が、耕作放棄地の増加です。日本の全国的な耕作放棄地面積は約25.7万ha(農林水産省による直近データ)で、神奈川県の面積と同じ程度になります。東北地方でも、耕作放棄地が増えています。さらに困ったことは、持ち主がわからなかったり、遠方に住んでいて不在だったりする農地が増えていることです。もっとも、困ったことがあれば、それを解決する人たちが現れます。そのお助けマンが、農地中間管理機構(農地バンク)になります。農地バンクは、東北地方で存在感を高めています。農地バンクは、貸し手から借り受けた農地を整理しながら、意欲的な農家に農地を橋渡しする支援をしています。全国でも有数のコメ所である東北地方は、水田の集積に取り組む例が目立っています。その陰の支援者が、農地バンクともいえます。農林水産省は、2024年度と2014年度の農地集積率の伸び幅調査を行いました。この伸び幅調査では、山形県は全国3位、福島県は5位、宮城県は8位でした。農地の集約や大規模化を推進することは、生産コストの低減などにつながります。蛇足ですが、ドイツの中規模の農家は、約100 haの農地を持っています。この100㏊の農地を、平均1.5人で耕作しているのです。典型的な中規模農家では、小麦、トウモロコシ、そしてマスタード(種)を栽培しています。ドイツのトラクターは、1日に10㌶以上を耕作してしまいます。しかも、このトラクターはコンビマシンを連結しており、播種と鍬入れの複数の工程を一気にやってしまうのです。広い農地には、機械化と省力化、そして生産性の向上を同時に実現していることを示しています。

 日本の農地は、分散していることに困った特徴があり、その特徴がデメリットになっています。農地の分散が、生産性の向上を妨げている一因になっています。もちろん、デメリットがあれば、メリットに変える集団や組織があります。それが、農地バンクになります。農地バンクは、離農を決断した農家の土地を引き受け、営農意欲のある農家に農地を貸し与えています。意欲のある農家は、農地をさらに大きくして、コスト低減に努めて農業経営を向上させる好循環を作り出しています。青森八戸市では、1000~2000平方メートルと細かく分かれていた水田を約5000平方メートルに再編する事業が進んでいます。水田を約5000平方メートルに再編し、規模を拡大したい農家に集約する事業が行われています。この事業は、2029年度までに終了する見込みで、整備費は国と県、そして市で負担することになります。小区画で作業効率が悪く、水はけも悪いため、現状は大型機械の導入などが困難でした。また、農地の分散は、移動にかかる時間は農作業時間の10~15%を占めるほど非効率になります。これらのデメリットをなくし、農家1戸あたりの経営規模を拡大して、生産性を上げる狙いがあります。この狙いが実現した暁には、豊かな農家が生まれることになります。

 余談になりますが、農地(狭くて分散している)の生産性が悪ければ、それを是正すれば良いわけです。空き家が塩漬けになっている原因があれば、その原因を取り除けば良いわけです。現在、全国の空き家は900万戸ほどあります。このうちの半分ほどが、賃貸用の住宅になります。430万戸ある賃貸空き家が活用されれば、貸主も不動産業者も、そして行政もウインウインになります。ウインウインになれない原因が、高齢者がスムーズに賃貸できないことにあります。65歳以上の単身の生活者は、2020年で約700万人にのぼります。単身の65歳以上方が、賃貸住居の契約に苦労するケースがあるのです。賃貸物件の所有者には、高齢者の家賃の支払い能力や孤独死などへの不安があるようです。孤独死を恐れ、不動産の所有者が貸し出しを敬遠する傾向もあります。「事故物件」になると、件価値が平均で2割ほど下がります。特殊な清掃が必要になった場合、告知義務のある「事故物件」になるのです。孤独死は発見が遅れると、原状回復などで平均40万円ほどかかると言います。さらに、身寄りのない高齢者の遺留品をどう扱うかという課題もありました。借り手が契約中に亡くなった際、賃借権の扱いにも複雑な問題が生じてきます。もちろん、政府も対策を行っています。政府の支援策は、入居時の相談から入居中の見守り、死亡後の対応まで一貫して、大家さんと要配慮者を支援するものです。指定法人が大家と協力して、入居者の日常の安否確認や見守りを提供する仕組みもつくるようです。

 最後は、農地のマッチングアプリの利用についてです。岩手県ではアプリを活用した農地の集約事業が進んでいます。Tannbo (タンボ、岩手県滝沢市)は、耕作権の移動案を自動計算するアプリ「農地集約システテム」を開発しました。Tannboは、岩手県立大学発の新興一般社団法人になります。集約事業の対象地域で参加を希望する複数の農家に、耕作したくない自分の区画と耕作したい他人の区画を選んでもらいます。集約事業に参加する農家は、耕作したくない自分の区画と耕作したい他人の区画をアプリに入力してもらいます。その後、アプリが計算したマッチング案を農家に示し、合意した場合は希望者に耕作権を移す仕組になります。岩手では、アプリが集約をスムーズに行っているのです。この仕組みは、空き家や賃貸住宅(借り手がない物件)などの問題にも応用可能かもしれません。使われずに税金だけ払い、そしていくばくかの維持費を常に浪費する状態よりも、少しでも収入があり、家のない人や農地を求める人の役に立つ仕組みは望ましいものです。そんな仕組みが実現すると、楽しい地域になるかもしれません。

 備考

 世界の首都圏における地価の上昇、それに伴うマンションなどの賃貸料の上昇が、世界的に問題になっています。東京においても、この問題が深刻になってきています。でも、東京にも空き家はあり、今後とも増えることが確実視されています。もし、この空き家が有効活用されるようになれば、東京は働く人々(学生も含む)に住みやすい、そして働きやすい都市になります。

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