ウオーキング、サイクリング、ジョギングなどの能動的なレジャーは、集中力やモチバーションを高めます。身体的な活動は、気分をポジティブにする効用があります。なおかつ、その効果が持続する特徴があります。日常生活でのポジティブな気持は、日々の生活の中で幸せを感じる前向きなものです。ポジティブ活動をするほど、幸福度が高まり、充実した生活を過ごすことができます。幸せには、現在のポジティブな気分と将来に関するポジティブなものの両方が含まれると考えられています。近年、このポジティブな気持ちを高めたり、持続させたりするツールに注目が集まるようになりました。有名な所では、ナイキの厚底シューズがあります。ジョギングなどでは、このシューズを履くことで、走るプラスもう一つの上の満足感を得ることができたようです。
ウオーキングのツールとしてのシューズだけでなく、ポールも注目を集めるようになりました。歩行において足腰の弱く安定性を欠く方には、ポール(杖、ステッキ)が必需品になっています。それも、1本の杖から右手と左手に2本持つ方も増えています。歩けなくなれば、体力が低下し、健康水準が落ちていくことが分かるのでしょう。今現在、積極的にポールを使って、強めのウオーキングする方も増えているのです。シナノという企業は、高齢者用の杖や歩行時に姿勢を支える「ウオーキングポール」を手掛けています。この会社は、長野県佐久市にあります。この会社が作るストックは、スキーの滑りをコントロールしやすい点が受け、人気ブランドに成長しました。このポールを両手に持って、歩くことに満足と体力の維持向上の両方が手に入るという流れになります。今回は、運動に使われるツールの役割を考えてみました。
良い歩き方は、人生の財産になります。人生に役立つものの周りには、ビジネスが生まれます。ウオーキングの周りには、人々の足下を支えるシューズのビジネスが生まれました。履きやすいシューズを単独で販売するのではなく、健康と搦めて販売するスポーツ企業も現れています。散歩やランニングなどの運動量が適切に確保されていれば、脂肪、筋肉、骨のいずれに対しても良い影響をもたらします。運動が海馬にも影響を与え、脳を活性化させることも分かり始めました。適切な運動をすれば、動きがよく、姿勢がよく、体型がよくなります。良い歩き方とは、足指の蹴りが、足裏からふくらはぎ、太ももや上半身までの筋肉へ力を円滑に伝えることになります。足指の蹴りから上半身まで筋肉の動きが、円滑に伝わることで正しいランニングやウオーキングできるわけです。ところが、歳をとるとさらに、一定の時間を歩くだけで、足、腰、背の筋肉に疲労が蓄積します。足が疲れれば、膝が曲がってきます。腰が疲れれば、腰を曲げた姿勢で歩くことになります。いわゆる腰の曲がった前傾の姿勢で、歩くことになります。これを補正するツールが、2本のポールというわけです。ポールを両手に持つと背筋が伸び、左右のバランスが取れた状態でウオーキングができます。高齢者が陥りやすいバランスの崩れを、2本のポールが防ぎます。ポールウオーキングは、手足を有効に使いますので、歩幅が広くなり、運動の質と量を高めます。
自転車にも、根強い人気の企業があります。シマノの自転車でサイクリングをすれば、満足と体調の維持や向上は確かなものになるかもしれません。シマノは、1921年の創業で自転車の基幹となる駆動輪「フリーホイール」の生産を始めました。1973年には、ロードバイクなど高級自転車向けにブレーキや変速機などを一体化する改革を行いました。シマノは、高級自転車向けにブレーキや変速機などを一体化したコンポーネントの販売を開始します。操作性の高さで、欧米のトップレーサーが採用して知名度を高めました。1982年には、世界に先駆けてマウンテンバイク用コンポーネントを製品化し、市場を席巻していきます。高級車向けコンポーネントは、世界シェアの7割に達する企業になります。現在も、ペダルやプレーキなどと組み合わせて欧米や台湾などの自転車メーカーに供給していいます。シマノは、ロードバイクなど高級車の変速機で高いシェアを誇ってきました。好事魔多しということわざがありますが、現在この「魔」がシマノを襲っています。それは、E-BIKE (電動アシスト自転車)の急速な普及です。急速に普及するE-BIKEには、苦戦が続いているようです。
シマノも、この苦戦に甘んじているわけではありません。反撃の一手を用意していました。シマノは、2025年に自転車の駆動をAIで制御する新しい変速システムを実用化します。この新しい変速システムを搭載した自転車の試乗会で、40代女性が驚きの声上げました。渋谷地区は、坂が多い町です。この町での自転車試乗会で、坂道を上り切った40代女性が驚きの声を上げたわけです。「こんなに軽々と坂を上れるなんて、E-BIKE (電動アシスト自転車)じゃなくてもいいと思う」と感想を述べたのです。シマノの新変速システムクォート(QAUTO)は、AIチップを搭載したハブ部品と変速機の仕様になります。11段ギアの「クォート」の最大の特徴は、ハブ部品のAIが「頭脳」となり自転車を操作する点にあります。自転車の運転ではペダルをこぐ際のテンポや変速のタイミングなどに、乗り手の個人差が生まれます。乗り手の運転のクセをAIが学び、自動でギアチェンジする仕組みです。さらに実際の乗り手の運転のくせを学習することで、自転車の速度や傾きから適切なギアチェンジを自動で行うのです。自動で行う電源は、乗り手のペダルをこぐエネルギーを利用することになっています。ギアチェンジを気にせずブレーキ操作に専念でき、安全運転にも、今まで以上に対応できるようです。E-BIKEのようにリチウムイオン電池を搭載しないために、車体も軽くなる利点もあります。重いE-BIKEと比べて、軽い走りと運転のしやすさから、クォート搭載車にも勝機があると自信を見せています。
余談ですが、冬の野外スポーツにはスキーが名乗りを上げます。この冬のスポーツにも、ゲレンデではスノーボードからスキーに回帰する流れがあるようです。この業界では、ロシニョール、フォルクル、フィッシャーなどが有名なスポーツブランドになります。これらの有名ブランドは、古くからの企業と長期契約が結ばれています。ウェルツホルツ・グループは、創業から200年近い歴史を持っています。この企業は、スキー板のエッジで世界シェアを握り、「隠れたチャンピオン」と呼ばれています。スキー板向けのエッジで7割、スノボでは8割を超える圧倒的な世界シェアを握っています。蛇足になりますが、現在トランプ政権の関税攻撃が脅威になっています。トランプ大統領の自国優先主義によるブロック化は、貿易に依存するEU、そしてドイツ経済に大きな脅威になっています。ところが、このウェルツホルツは、第1次トランプ政権下において、対米輸出が順調で、米国内の価格上昇の恩恵も受けた企業でもあるのです。第2次トランプ政権においても、今回も米国内の価格上昇の恩恵をうけるようになるかもしれないと、2匹目の「柳の下の泥鰌」を狙っているようです。
最後になりますが、「より早く、より安全に」は、使用価値になります。より早くなどの姿勢で仕事に臨むことは、使用価値を重視していると言われています。一方、ユーザーが満足感とする価値は、貴重価値と呼ばれます。より美しくより可愛いなどは、ユーザーがそのモノを得られる満足感で判断される価値になります。使用価値も貴重価値も、必要なものと思われます。今の家庭には、電気掃除機が必需品になっています。強力な吸引力を持つ掃除機が、家電製品として購入されてきました。でも、ある消費者は、岩手県九戸村の高倉工芸の南部箒を選びます。長柄が3万~10万円になる南部箒を買うのだそうです。南部箒は無農薬の天然素材を使い、絨毯でも掃除機以上にほこりがとれるといいます。使う方は、夜遅く帰宅しても掃除機はかけられないが、箒は静かにできるという利点を述べています。吸引力の強いダイソンの掃除機より、高級箒(南部箒)が東京などの大都市部で人気を集めています。デザイン性の高い高級箒で行う掃除の時間が、それ自体価値があるというのです。人は便利さ、速さだけではなく、密度の濃い時間の過ごし方も求めるようです。ある人達は、その時やその場でしか味わえない充実した時間の消費を楽しむという行動様式をとるケースも見られます。ある意味で、個人の貴重価値を堪能するというライフスタイルもこれからの選択肢になるのかもしれません。