過酷な仕事を克服する癒しのスキル獲得  アイデア広場 その1536

 テレワークや副業などの多様な働き方が、今後ますます広まっていくと予想されています。多くの企業が、試行錯誤を重ねながらも、テレワーク等の多様な働き方に適した雇用形態が導入しようとしています。その試行錯誤の中に、ジョブ型雇用制度の採用があります。ジョブ型雇用制度とは、企業と従業員が合意した職務内容(ジョブ)に基づいて雇用契約を結ぶ制度になります。職務内容を明確に定義し、その職務に適した経験やスキルを持つ人材を採用します。提示された職務の知識やスキルのある希望者は、企業とウインウインの関係を築くことが可能になります。「ジョブ型雇用制度」は、テレワーク等の多様な働き方に適した雇用形態になります。この作業形式は、時間と場所に縛られないことで、以前より意欲的に働いて成果を上げる人も多くいるようです。時間と場所に縛られないことで、時間を有効活用し意欲的に働いて成果を上げる人も多いのです。多様な働き方に共通するのは、自由度が高まり、成果への責任が高まり、成果を上げることに繋がるという流れもあります。「ジョブ型雇用制度」の要点は、仕事の進捗と成果を自ら管理することが求められるという点です。働く人々が成果を上げ、仕事を遂行するには、知識やスキルなどの能力が必要です。「ジョブ型雇用制度」には、同時に難しさもあります。働く人の中には、意志の弱い方もいます。仕事の進捗と成果を自ら管理することが、一部の人にとっては非常に難しいこともあるのです。

 仕事の進捗と成果を自ら管理することができれば、テレワークなどの仕事は楽しくなり、成果を上げることができます。仕事は楽しくなり成果があがりますが、そのためには、いくつかの条件があります。大きくまとめると、5つの条件の確保と3つの心理状態を維持することが求められます。5つの条件は、技能の多様性、仕事のまとまり、仕事の重要性、自律性、フィードバックになります。技能の多様性は、仕事を行う上で必要な多様な知識やスキルを持っているかどうかという点です。この多様な働き方の変化に共通するのは、働き方の自由度が増すことです。仕事のまとまりは課題細かく分業化されるのではなく、一定のまとまりを理解し、その全体像を見て仕事が出来るかどうかになります。仕事の重要性は、その職務が他者の生活や仕事にどの程度の影響を与えるかを理解した上で仕事を行えるかどうかになります。自律性は、仕事の手順を自ら調整できるかどうかになります。もちろんこの場合、どの程度の裁量が与えられているかなども問題になります。最後のフィードバックは、職務の結果に関する情報が本人にどの程度もたらされるかになります。本人の行った仕事の成就度を、本人が確認する過程ともでもあります。もう一つの要素である3つの心理状態は、意味のある仕事という自覚、仕事の成果に対する責任感の自覚、職務活動の結果についての情報になります。結果についての満足、不満、満足と不満から次のステップに向かう意欲などが条件になるようです。

 具体的に、テレワークで成果を上げるにはどうすれば良いのでしょうか。そのヒントが、ワーケーションの実験にありました。ワーケーションは、ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせたワーケーションという造語になります。観光庁は、ワーケーションを休暇型と業務型に分類しています。休暇型は、有給休暇を活用した観光地でのテレワークになります。業務型には、地方のサテライトオフィスでの勤務やリゾート地での合宿などになります。2020年6月に、ある研究所が沖縄で行った実証実験では、良い結果が報告されています。3日間のワーケーションを体験した人の生産性は平均20%上昇し、ストレスは37%低下したというのです。さらにリフレッシュ効果を、35%の参加者が認めています。面白い報告は、「これまでと異なる環境で新たなアイデアや企画が生まれた」という声も14%に及んでいます。課題もあるようです。新入社員研修に関しては、ワーケーション形式だと生産性が低下することが明らかになっているのです。技能の多様性、仕事のまとまり、仕事の重要性、自律性、フィードバックなどの知識やスキルを高めておかないと、テレワークもワーケーションも、上手く成果を上げないものになってしまうわけです。

 一般に、労働の種類はブルーカラーとホワイトカラーの2つに大別されています。ブルーカラーは、労働の現場で主に体力が求められる「肉体労働」ともしいえます。彼らは、製造業や建設業、鉱業といった生産現場で生産工程などに従事する人たちになります。作業員、技術者といった労働者ということです。ホワイトカラーは、「知識労働」や「頭脳労働」とも呼ばれ、肉体労働とは異なる労働価値を求められている仕事に従事する人たちになります。ホワイトカラーは、高度経済成長期を支えたサラリーマンなどが当てはまるようです。この二分法に加えて、最近は2つの労働と異なる価値を持つ第三の労働として、「感情労働」が認知されるようになりました。感情労働は、サービス業をはじめ、顧客と直に接する仕事において、笑顔を見せ続けることが求められます。感情労働は、労働価値として過度に感情の抑制が重視されているようです。AIの活用などが広がることにより、人間が直接関わる感情の価値がますます高まると予想されるようになりました。これらの労働には、以前よりストレスの負荷が高まっています。現在の労働の課題は、知識とスキルを駆使し、どのように成果を上げ続けるかになるようです。そのためには、ストレスを軽減する癒しの利用法を身に付けるとか施設を利用することが一つの解決策になります。

 ストレス軽減には、呼吸法が良いとされています。呼吸と感情は、密接につながっていることが分かっています。リラックスしているときは、深くゆっくりとした呼吸になります。不安やストレスを感じる場面では、呼吸を意識してゆっくり深くすると、不安やストレスが減少します。先見の明のある企業は、いち早くマインドフルネスを導入しています。これは、呼吸法の一般的呼称になっているようです。このマインドフルネスは、扁桃体を鎮静化し、その下に続く視床下部、下垂体、副腎系を鎮める働きをすることが分かってきました。アメリカのある有名企業では、全社でマインドフルネスを導入したところ、社員のストレスが3分の1になったと報告されています。さらに、導入後、医療費が大幅に減り、生産性も高まったと嬉しい状況も生まれているようです。ドイツも負けてはいないようです。ドイツには、クアオルトという健康保養施設がります。ドイツ国内に370ヵ所の施設があり、年間2400万人の人々が利用しているのです。クアオルトには、医療機関もあります。医療機関が処方する森林浴などのプログラムに参加すれば、医療保険の適応の対象になるのです。森林浴やウオーキングによって健康を維持増進しているわけです。自然に触れ運動をしながら、健康寿命を延ばし、さらに医療費の削減に貢献しています。ここでの主役は、森林浴になります。

 余談になりますが、マインドフルネスや森林浴に加えて、博物館浴なというコンセプトが出てきています。先見的医療機関では、「芸術療法」などを治療に取り入れているところもあるようです。経験的に、アートが健康に良い影響を与えているであろうことは言われていました。でも、「芸術療法」は医薬品のような治験データで科学的に裏付けることはありませんでした。それが、少し変わってきました。2019年に世界保健機関(WHO)が、アートが健康進に役割を果たす報告書をまとめたのです。その報告書には、音楽や舞台芸術なども含めたアートが「病気の予防と康増進」に役割を果たすとされているのです。この報告を機に、世界規模でデータの蓄積と効果的なプログラムの開発が進むようになりました。芸術品の鑑賞前後の血圧や脈拍、疲労や活気などの数値データを比較する実証実験が行われています。博物館に行った後は血圧が正常値に近づき、疲労が減って活気が増すという数値が出るようになりました。それが、認知症やうつ、そして孤立などにも、アートの効用が期待されるようになりました。いわゆる「社会的処方」としての「芸術療法」が、期待される流れになりつつあるのです。九州産業大学の緒方泉特任教授は「森林浴」になぞらえて「博物館浴」を提唱するようになっています。

 最後になりますが、2024年のインバウンドの数は、約3700万人でした。この史上最高の外国人訪問の人々は、日本人が知らないうちに日本文化の高さに関心を持つようになってきました。その関心の中に、癒しなどもあるようです。欧米では、伝統的に心理療法が盛んに行われてきました。欧米人は喧騒な生活や仕事の中にありながらも、心の安らぎを満たす生活を求めています。この役割を担ってきたものが、心理療法だったのです。心の安らぎを得るために、フロイトやユングなどに代表される心理療法が進化してきたのです。でも、このキリスト教圏で発達してきた療法に、飽き足らない人々もでてきたようです。

日本を訪れた欧米人中には、茶道にこの安らぎを見いだした方もいるようです。茶道は精神的安らぎを求める支柱として、禅の思想を模倣しながら発展してきました。禅僧は精神的安らぎの至るために、禁欲的な生活と苦行を自分自身に課しています。禁欲は、非常にストイックで難しい側面を持っています。でも、禁欲の深部には、快楽が潜んでいます。肉体的苦痛とは裏腹に、精神的快楽を得ることもできるのです。禅や茶道は、頭で考えるだけでなく、体を使いながら課題を乗り越えていく仕組みがあります。欧米の心理療法は、頭や話だけで課題を解決する仕組みが主流です。西洋と東洋の良い側面を取り入れて、心の安らぎを堪能しながら、仕事の成果を上げていってほしいものです。

てほしいものです。

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