消費者が求める情報を提供できる企業が栄える   アイデア広場 その1759

 ザッポス(Zappos)は、ラスベガスを拠点とする米国最大級の靴・衣料ネット通販会社です。驚異的な顧客サービスと、社員の幸せを最優先する企業文化で知られ、アマゾンに買収された後も独自の経営を維持する伝説的な企業になります。この会社は、注文と関係ない身の回りの悩みの話をできるだけ聞いて対応をしていました。顧客と何時間でもつきあう「雑談」をしており、生産性という基準からは程遠いものでした。でも、顧客からの感謝の投稿が多く、口コミで評判を勝ち取っていました。長い目で見れば最高の評価を勝ち取り、利益を上げる会社であり続けています。日本にも、このような企業はないかなと見ていたら、女性月刊誌の「「ハルメク」がその対象になりました。現在は、紙媒体が売れないデジタル全盛時代になります。月刊誌の発行部数は、軒並み減少しています。10万部を超えている出版社はほんの数社と言われています。そんな中で、ハルメクは、発行部数が約46万部で、2017年から3倍に増えるという好調さです。紙媒体の停滞の中で、定期購読のみのハルメクが、なぜ好成績を実現しているのか。今回は、この好調の要因を探り、それをヒントに新しい未来の企業を探ってみました。

 ハルメクの山岡朝子編集長が、雑誌の部数を3倍に伸ばした立役者になります。彼女が行ったのは、社内に豊富にあった顧客データの活用がまずあります。顧客が知りたいことを「ぴったり」届くことを実現したのです。データ分析の結果、顧客の要望を見える化できたようです。この手法は、ザッポスの顧客と何時間でもつきあう「雑談」と同じパターンに見えます。さらに、データの分析だけでなく、顧客である読者の声を深く、執拗に聞いたようです。たとえば、少し前まで、中高年が苦手としていたスマホの使用方法など事例があります。スマホを持ち始めた女性に、1週間毎日使ってもらいました。画面を押さえる力加減がわからずつまずいた女性がいたので、指の腹の力加減にコツがあるなどを紹介しました。紙面で、紹介すると読者から操作しやすくなったと反響があったのです。さらに、読者にリアルな場に集まってもらい、スマホを持ち始めた女性に、どんな操作につまずいたのかを全部記録してもらいました。この回答を分析すると、8つのストレスでスマホが使えていないことが分かったのです。このストレスを克服するスマホの使い方を特集すると、部数の大幅増につながったということです。

 女性誌のハルメクで面白い点は、「老」や「シニア」の用語を使わないことです。この女性誌は、従来の高齢者の啓蒙的な内容と決別しました。ハルメクを、シニア誌ではなく女性誌だと捉え直しました。啓蒙的な内容と決別すると、ファッションや美容など企画が次々にでてきました。ファッションや美容、旅行、インテリアなど、それまでにない企画がたくさん出てきたのです。狭く深い内容から、広く浅い、そして明るい内容に衣替えができたということです。エクササイズは動画、スタイルは写真、学びはライン講座などと使って適した伝え方があります。写真を大きく見せることで、誌面が明るくなりました。ちなみに、紙の雑誌のハルメクは65~80歳を対象にしています。この世代は紙に親しんだ世代でもあり、基本的に紙で読み続けるという思惑もあるようです。この企業は、次の世代にも新しいコンテンツを提供しています。デジタルに慣れたこの世代は、ウェブでコンテンツをうまく届けられるように準備しています。デジタルメディアTHAIMEK up (ハルメクアップ)を、次の50~64歳の世代に用意しています。

 最近女性の優位性が、論じられるようになりました。平均寿命で、このことが明らかになります。さらに、女性は男性に比べ、会話能力が優れていることが分かってきました。この能力が、脳の加齢を抑制しているという説が受け入れられ始めています。女性は言語中枢が発達している人が多く、話し続けるうちにいろいろなことを思いつくケースが多いのです。さらに、女性は、コミュニケーションに必要な言語能力や共感能力が男性より高いことが知られています。彼女達は、集団の生産力を高めることに必要なコミュニケーション能力を発達させていきます。脳は、右脳と呼ばれる右半球と、左脳と呼ばれる左半球に分かれています。右脳は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感から入ってくる情報をイメージに変えることが得意です。左脳は、決断や判断、選択をする顕在意識と直結して言葉や数字、記号をつなぎます。女性性脳の特筆すべき点は、男性脳の数十倍も上手に、「右脳で五感を感じて、それを左脳で考えて言葉にする」ことができるのです。男性脳は、女性脳ほど、「感じて考えて言葉にする」ということが優れてはいないようです。このような女性に、時の話題になるような事例と解決策を提示することは、より女性の生活を豊かにするかもしれません。

 消費者の要求水準は高くなり、十人一色から十人十色、さらに一人十色の時代となっています。でも、際限なく細分化することはないようです。たとえば、コメはブランド米が、多くの人に食べられてきました。でも、たんぱく質の多いコメは、腎臓病などで人工透析を受けている人にとって負担のある食べ物になります。この負担を取り除ければ、ビジネスチャンスになります。つまり、たんぱく質を少なくしたお米を作れば、腎臓を患っている人々には福音になるわけです。人間の探求心は優れており、その条件を満たすお米を作り出しました。それが、ピーエルシー米です。このコメは、タンパク質を通常の20分の1にまで低減し腎臓の負担を軽滅するすぐれものです。タンパク質の低減は、人工透析にかかる医療費の抑制にもつながっているのです。このように、特定の消費者を対象にしたビジネスにも、商機はあるわけです。その商機のつかみ方にも、ハルメクの手法は参考になります。ハルメクは、定期購読者に宅配で届けています。読者との接点を作るため、定期購読のみで届けています。女性誌「ハレメク」は、書店で手に取ってもらうことがなかなかできません。新聞などの広告で、ピーアールすることになります。でも、新聞読者はめくって、一瞬しか広告を見ないものです。その一瞬に、重きを置きます。新聞広告は、1冊の本を作るのと同じエネルギーをつぎ込んで作ります。たとえば、広告を2パターン作り、読者でない方にどちらを読みたいかを聞く作業もします。そこで、まず分かったことは、「老後の「老」という字がすごく嫌だという声でした。そこで、この「老」字は使わないようにしました。「シニア」も、使わないようにしました。一方で、「60代」「70代」は読者にとって事実だから抵抗感は比較的少ないことがわかりました。この年代は、「実年齢より自分は少し若い」という認識があることも分かりました。そこで、テーマによっては「50代からの~」という表現を使うようにしました。実年代より少し若い世代向けの情報こそ、自分に向いていると考える傾向があるわけです。であれば、この「少し若い」という内容の言葉や文章を多用することになります。読者の機微を見つけて、言葉にすることが非常に重要な作業になるようです。

 余談になりますが、最近マレーシアの成長が注目されるようになりました。この国は、長期間にわたって、多民族が平安に暮らしてきた歴史があります。現在、この国は強烈な勢いで経済発展をしています。マレーシアは、一説では東南アジアで最も早く先進国入りするとも言われています。生活コストの安さとアジアの急速な経済発展を考えると、非常に恵まれている国になります。経済発展している国には、多くのビジネスチャンスが眠っています。この国に移住して、有料の情報を発信している日本人人がいます。彼は、新興国への移住、就職、起業などに関するリアルで最新の情報を発信しているのです。月額1155円の小口パトロンを300人限定で集め、アジア現地の情報を発信しているわけです。日本より生活費の安い地域で、これだけの収入があれば十分に生活ができます。経済発展国の情報を、成熟国に流しています。精度の高い情報を得られれば、チャレンジ精神のある方に魅力的ビジネスの場になるかもしれません。

 最後になりますが、ハルメクは女性を孤独にしないことを志向しています。日本の女性は寿命が長く、晩年はひとりになる可能性が高くなります。そんな晩年の日常を、明るく楽しくするツールでありたいと考えているようです。そのツールには、女性雑誌とAIあるわけです。たとえば、歌舞伎町のホストの約7割が「Chat (チャット) GPT」などの対話型AIを使っています。彼ら・彼女らは、対話型AIに、接客の助言を求めるだけではありません。仕事のつらさや将来への不安を打ち明け、AIの言葉に慰められているといいます。もっとも、慰められるだけでは、楽しくありません。適度な好奇心を満たす行為も、老若男女問わず楽しいものです。好奇心を、拡散型好奇心と追求型好奇心の用語を使って説明することが行われています。近年、この好奇心には、もっと多くの要素があると言われ始めました。ここでは、便宜上「4つの好奇心のタイプ」について上げてみました。その4つは、知らないことに敏感、探究を楽しむ、他者を知りたい、スリルを求めるなどになります。こんな内容が、日常生活に適度に現れ、解決されていけば、楽しい生活を送れるかもしれません。それを支援するツールの価値も、ザッポスのように高く評価されることになるかもしりません。

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