古米を日本人が喜んで購入する仕組み アイデア広場 その1815

 現在、日本はコメ余りと、コメの価格の下落に直面しています。「令和のコメ騒動」で高騰した2025年産米から、2026年産米は大きく下がると予想されてきました。その予想が現実の様相を呈してきました。あるスーパーなどでは、新米が、昨年度のコメより安く販売されています。宮崎県の2026年産の早場米の集荷価格が、前年比で4割下がることがわかりました。JAみやざきが集荷の際に農家に渡す前払い金は、コンヒカリ玄米60kg、1万8000円になりました。JAが集荷の際にコメ農家に渡す前払い金が、「概算金」と言われるものです。玄米60k g 、1万8000円は、前年産(3万2000円)に比べ、1万 4000円(44%)と大幅に下がるものです。蛇足になりますが、国認定の業界団体は、コメの生産コストを玄米60k g、2万535円(2026年4月時点) と提示しました。2万535円は、店頭価格で精葺米5kg3500円程度とされる水準になります。この水準が、農家がコメ作りをして採算の合う最低の基準とされています。それを下回る水準では、米を作る農家が生活できなくなることを意味します。

 「令和のコメ騒動」で、コメは高騰したのですが、農家の方が豊かになったとは言えないようです。農家の方に価格の転嫁が、十分になされていないのです。コメの消費は、安定したものであることが望ましいわけです。日本の農産物の自給率は、カロリーベースで33%と低い現実があります。毎年、多くの穀物を輸入しています。日本は、世界最大の穀物輸出国の米国から多くの農産物を輸入しています。米国の大穀倉地帯では、その大地の下にあるオガララ帯水層という化石水を使って農作物を栽培しています。オガララ帯水層は、豊富な地下水を誇っていました。この帯水層の水位が、近年急速に低下しているのです。この帯水層の水位の低下がこのまま続けば、穀倉地帯が砂漠化し収穫は大幅に低下します。日本の農産物の輸入先は、米国25%、中国12%、オーストラリア7%、タイ7%、カナダ6%の順になります。主な輸入5国のうち深刻な水資源が懸念されている国は、米国、中国、オーストラリアになるのです。コメは、日本が自給できる数少ない穀物と言えます。食料の安全保障を支えてきたコメを作る農家が、離農の危機にあるのです。緊急でかつ持続的な支援が、農家には必要になっています。

 対策は、まず古米の消費対策や備蓄対策になります。一つの対策として政府備蓄米を買い戻すことがあります。これは、供給が不足する事態に備えて政府が備蓄するコメになります。今までは適正水準として、100万トンのコメを備蓄していました。でも、「令和のコメ騒動」で備蓄が減少しています。政府備蓄は、2025年の放出によって約32万トンまで減少しています。これを元の水準にする対策になります。もう一つの対策は、ふるさと納税によるものです。ふるさと納税でコメを手に入れている方は、一定数これまでもいました。これは、農家を支援することにもつながっていました。2025年は、この一定数が異常に増加しました。最大産地新潟県の自治体では、寄付が急増してしいました。8月の寄付件数が、前年比4.3倍にのぼったのです。ふるさと納税でコメを手に入れている方は、これまでも一定数いました。これは、農家を支援することにもつながっていました。これらの支援者と結びつきを強めて、農家の安定につなげる工夫も必要です。ふるさと納税のコンテンツに、「コメ+ホテル優待券」などを加えるアイデア出てきます。美味しいコメを食しながら、稲穂の風景を見るのも風情のあるものです。ここに、温泉が加われば、さらに風情は倍加するでしょう。こんなコンテンツ加えたふるさと納税を作り、固定ファンを引き留める対策も必要になります。

 より積極的な対策のヒントが、スポーツのコアなファンの中に見出されます。ファンはチケットを得るために、一定の負担を喜んで引き受ける姿勢があります。チケット販売の場合、大切な対象者はこのコアなファンになります。ここに、コアなファンの優先度を高くする仕組みを導入すると面白くなります。売上の最大化ではなく、ファンのコア度を加味した販売システムをつくるということです。コアなファンの存在は、Jリーグでもステージでも継続的に繁栄させる基礎になりました。コアなファンの見極めと、彼らにチケットの優先的に配布を行うダイナミックプライシングの仕組みを構築します。これに類似した方式を、古米販売においても、新たに作り出します。スーパーなどで古米を買う消費者に、「おもけ」の遊びを導入してはどうでしょうか。古米を買う消費者に、古米を買った時の「おまけ」として優待サービスを提供する仕組みになります。たとえば、宝くじ方式なども考えられます。スーパーで販売する古米5㎏の袋に、当たりはずれの券を付けておきます。各日曜日に、その当選番号を発表し、古米5㎏相当の優待券を提供する方式も考えられます。また、優待券は、温泉一泊二日の優待券でも良いでしょう。古米や温泉より魅力的なコンテンツも、もちろん考えられます。古米を速く消費し、みんなが美味しい新米を食べられる環境を整えることが、農家も消費者も、農協も、流通に関わる人にも安心を与えます。

 問題は、その優待の資金をどこが出すかということになります。これには、一つの事例があります。日本のお米は、美味しいことで有名です。この美味しいお米には、稲のゲノム研究の成果があります。競馬の愛好家などは、理屈抜きに馬の走る姿に夢中になります。競馬というゲームに夢中になり、人々は馬券を買います。この夢中になって馬券を買うことが、日本の稲ゲノム研究を世界最先端にまで引き上げたことは、意外と知られておりません。この研究成果のおかげで、美味しいお米を食べることができます。そして、品質の良い米は、外国に輸出されるブランド品にまで成長しています。このゲノム研究には、500億円以上のお金を使いました。この500億円を寄付したのは日本競馬協会です。私たちが夢中で、デープインパクトの走りに陶酔している間に、私たちのお金は有意義な研究に使われていたのです。人々が競馬に夢中になって楽しんでいる間に、日本の誇る稲ゲノム研究が成功したというわけです。熱心な競馬ファンは、良い席でレースを楽しみたいというニーズがあります。ネットで申し込んで、席を確保することも難しいようです。そんな中でもし、スーパーの5㎏の古米を買うことで、指定席確保の「宝くじ」に参加できる機会は楽しいことになるかもしれません。スーパーでの古米やホテルの優待も、そして菊花賞の指定席などに、日本競馬協会が支援して頂けようになれば、日本の農業は明るくなるかもしれません。

 余談ですが、今回のコメ不足には、それに至る日本農業の衰退がありました。日本の米の総需要が、700万トンから800万トンと言われています。その中で、業務用米は、200万トンほどになります。日本では、中食や外食の需要者が増えてきました。中食や外食産業の求める手ごろな価格帯の米が、常に不足していたのです。そこに、2023年の生産が661万トンとなり、日本人が必要とするコメは、需要と供給の関係で需要が生産を大きく上回る状況が生まれつつあったわけです。そこに、外国人観光客が激増しました。彼らの目的の一つが、和食でした。当然、コメの需要は激増します。2024年と2025年は、コメ不足になりました。この予兆は、2024年5月ころからあったようです。コメ不足が広く報道されるようになった6月ごろから、コメがふるさと納税のサイトで人気になっていました。8月頃、スーパー店頭では、コメが品薄になったり、棚からコメが消えました。弱い立場の消費者が通うスーパーは、最初にコメの仕入れに困りました。そのスーパーも、コメよりも小麦を中心にした商品に力を入れていた事情があります。家計調査でみれば、2人以上の世帯のコメ支出額は、2011年に初めてパンに抜かれました。さらに、コメの地位の低下は、政府の行政にも表れています。コメ担当の部署は、食糧庁より格下の園芸作物も扱う農産局という名称になるという流れがあったようです。担当の方は、「コメと園芸作物を一体で、農業の高収益化を進める」と話していました。市場でも、行政でも、家庭でも、コメの地位は低下していたのです。でもコメがなくなって、初めてコメの大切に気が付いたとも言えます。

 最後は、農家の復元力のお話しになります。人間は苦しくなれば、それを乗り越える努力や工夫を重ねてくるものです。コメどころの秋田にもその兆候が見られるようになりました。この秋田県大潟村では、田んぼに苗を植えずに種もみを直接まく栽培法がじわりじわりと広がってきました。この乾田直播という方式は、春先の管理作業を省けるのです。ハウス内での苗を育て、「代かき」、そして温度や水の管理をする手間が省けます。乾田直播なら、こうした作業を省くことができるのです。この作業が省ければ、生産者は労働力を収益性の高い作物の栽培に振り向けられます。吉原忍さんは、約8.6へクタールの水稲作付けを乾田直播にしました。彼は、「難しい面はあるが、稲の根の張り具合は苗を植える場合に比べていい」と成果を認めています。彼は、これから年を取っていくことなど、先々を考えて決断したようです。コメ農家は、肥料や資材費が高騰するなか、コメの栽培だけでは所得増は望めない状況にあります。収益性の高い作物の栽培で、所得を向上させられる状況が求められています。コメの栽培だけでは、ジリ貧です。ジリ貧で農業から撤退すれば、耕作放棄地が増えます。耕作放棄地を増やさないためにも、乾田直播は一つの対策になり得ると期待を寄せられています。政府の備蓄米やふるさと納税のコメ、そして日本競馬協会からの支援などは、一つの対策です。でも、農家が自力で豊かな生活ができる生産方式を確立しない限り、日本の食の安全保障は不安定なままになります。生産者も消費者も、そして行政も知恵を出し合って、稲穂の国を支えていきたいものです。

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