小水力発電を賢く建設する アイデア広場 その1755

 ホルムズ海峡の閉鎖いらい、エネルギーの確保は再度身近な問題になりつつあります。将来は、核融合発電などの開発で、エネルギー供給の問題は解決に向かうとされています。現在は、原子力発電の一時的活用を経て、再生可能エネルギー(再生エネ)へとシフトしていく流れなってきています。石化燃料は、エネルギー密度が濃いので使いやすい利点があります。再生エネで石油と同じ大きさのエネルギーを得ようとすると、大きな量を集めなければなりません。たとえば、太陽光発電の場合なら、太陽光パネルをどれだけ広く設置できるかが課題になります。太陽光発電によって石油や石炭と同じだけの電力を得るためには、広大な面積が必要になります。風力発電なら、より風の強いポイトにより多くの風車を設置する必要がでてきます。その点、水力発電には利点があります。太陽光や風力に比べて、気象に左右されにくく、長時間発電でき、設備効率が高いという利点です。再生エネを利用する場合、地方にあった再生エネを考えていくことも選択肢になります。水が豊富で落差のある地区では、小水力発電の導入も面白いものです。今回は、小水力発電の利用に挑戦してみました。

 佐賀県吉野ケ里町の集落に、住民の出資で運営されている小水力発電所があります。その発電所は、山あいに白いコンテナなのです。そのコンテナが、松隈小水力発電所になります。小水力発電所は、既存の用水路を使い、一帯を流れる田手川から取水しています。この用水路は、高低差21.9メートルの水勢でコンテナ内部の水車を無休でまわしています。稼働状況は、スマートフォンで確認できるのです。2020年11月に稼働し、最大出力は30キロワット小さい発電所になります。稼働から5年が過ぎ、集落には計1000万円ほどのゆとりをもたらしている働きものです。国の固定価格買い取り制度(FIT)のもと、年間の売電収入は800万円前後になります。借入金返済(4700万円)など経費を除くと、年190万円ほどが地区の利益になります。その利益を元手に、数々の暮らし改善策を実現しています。乗り合いタクシー料金の補助、男性向け料理教室、農機具の貸し出しなど還元は多岐にわたっています。水路の維持にも必要な草刈りや水路掃除などの日当は、今までより引き上げられました。地区の行事には、発電所の利益還元もあり、住民が積極的に出てくるようになる状況が生まれています。

 松隈地区では41戸119人が暮らし、65歳以上が40%を超している典型的な中山間地の農村になります。この松隈地区では、農地保全やインフラの維持管理など他の中山間地と同じ問題を抱えていました。老いた集落に2019年、佐賀県から小水力発電の打診があったのです。この打診は、念入りに行われたようです。小水力発電の候補地を徹底的に絞り込み、基本設計までお膳立てて、松隈地区に打診しました。松隈の住民も、以前から「小水力は地区を活性化できる宝物になる」と考えていたようです。お互いがメリットを確認し、全戸が4000~5000円を出資する形で「松隈地域づくり株式会社」を設立しました。この時、日本政策金融公庫から事業費の8割、4700万円の無担保融資を受け建設を断行したわけです。面白いことは、補助金はゼロだったのです。地区のインフラと自前の資金で、小水力発電を稼働させたわけです。この稼働で、松隈地区の住民は活発に活動するようになりました。佐賀県でも、水力を財源に持続可能な集落を発掘する意欲があるようです。もっとも、この成功を見て、いろいろな自治体や企業などが300件ほど視察に来ているようです。また嬉しいニュースとしては、松隈に2024年と 2025年に、子育て世代が1戸ずつ移り住んでいます。

 バラ色の水力発電ですが、現実は厳しい情況も浮かび上がります。ある小水力発電の追跡結果は、75カ所のうち30件は消滅しているのです。稼働しているのは、40件の小水力発電ということです。小水力発電の追跡結果は、稼働状況が芳しくないといことになります。稼働状況が芳しくない理由は、枯葉などの流入で発電機能が低下をきたすことです。また、取水口などに土砂がたまり、稼働状況が低下することにあります。土砂などの除去に、苦戦していることが分かります。この苦戦を克服したところに、ビジネスチャンスあります。この維持やメンテナンス作業を行えば、稼働率は安定することになります。土砂や枯葉などの除去を、松隈の住民が水路の維持に必要な草刈りや水路掃除など行うことで、稼働率を上げている様子がうかがえます。その日当も、売電の利益から適切な額になっているようです。蛇足ですが、小水力発電は最大出力が1000kwh未満の小さい発電になります。小水力発電は、中山問地域の流量が少ない中小河川でも、高低差を確保すれば発電できます。日本全国には、水量の豊富な川が無数にあります。これらの資源が、地域に合った形で利用できれば、宝の山になります。富山県朝日町の笹川地区は、清流「笹川」を利用した小水力発電は、地域インフラの維持と環境負荷低減を両立するモデルです。約90mの落差を利用し、最大199kWを発電、FIT制度で得た収益を老朽化した水道設備の改修費に充てる「地域貢献型」のプロジェクトとして稼働しています人口約250人の笹川地区に、宮城県仙台市の建築会社が発電所を設けて売電を行っています。196キロワットの発電所で、約400世帯分の電力を作れるという規模になります。この発電所で作った電力を、北陸電力に売ることになります。売電費用を、水道のインフラ更新に使うわけです。発電所の管理や運営はすみれ地域信託(岐阜県高山市) が担うことになります。信託方式を採用は、「仙台の会社が倒産することがあっても、持続できるようにしたかった」ということになるようです。過疎に悩む地域が、地元の小水力の資源を生かして持続性を高める方式は地方再生の一つの選択肢になります。

 余談ですが、北海道の寿都町は、大胆な選択をしました。核のごみの最終処分場誘致に向け、第1段階となる文献調査への応募をしたのです。寿都町は日本海側の漁業が主産業の町で、人口は3000人を割り込む過疎の町です。この町の先進性は、風力発電にあります。風力発電が稼ぎ頭で、年間の売電収入は平均7.5億円と町税収入(2億円強)を上回るのです。文献調査はその入り口で、2年間に最大20億円の交付金を得られます。さらに、ボーリング調査など実地の「概要調査」に入れば、さらに4年間で最大70億円が町に入ることになります。もし、寿都町が受け取った20億円をダムに投資したらとうなるでしょうか。もちろん、寿都町にダムを造るのではありません。 笹川地区の小水力発電を宮城県仙台市の建築会社が作った様に、寿都町が得た交付金で、北海道の適地に小水力発電をつくるわけです。北海道の町村でダムの適地に作るのです。20億円で3つのダムを作ります。1つのダムからは、年間7300万円の利益が出ます。7300万円の利益は、3650万の折半でお互いの町村の自己財源として利用するわけです。3つのダムになれば、1億950万円になります。さらに、70億円が入れば、10個のダムができます。7億3000万円の利益が出て、折半すれば3億6500万円になります。13のダムでは9億4900万円になり、各市町村が折半すれば、4億7450万円を自主財源とすることができるわけです。最終処分場について寿都町は、「100年安心の産業」ともいえる将来像を描き始めているようです。実現すれば、ベーシックインカムが導入される最初の町になるかもしれません。

 最後になりますが、村や町に水力発電を計画し、開発し、運営する能力があれば面白いことになります。無から水力発電所の構想を立て、有効性の目利きができるのは、水力発電の技術者たちとなります。水力発電を経験した技術者は電力会社、ゼネコンや河川行政で水力発電に関わった経験者たちです。日本の水力発電は、長らく停滞していました。水力発電を経験した技術者は、高齢者になっています。経験者の豊富な技術者は、65歳以上の方が多いのです。彼らを招いて、活躍の場を提供することも、面白いかもしれません。技術のある方に、活躍の場を提供するわけです。技術者は、挑戦というモチベーションを持っています。町村は小水力発電の開発により、水源地域から新たな自己財源を得ることになります。その利益の一定の割合を、技術者にダムが機能している限り、一生提供する仕組みも考えられます。より積極的に進めようとすれば、町村でダムを作ることになります。500kwの発電規模で工事費は川の様子、ダムの形や状況などによりますが、約7億円と推測されます。7億円を金融機関から、融資で調達します。7億円は融資条件にもりますが、15年から18年で償却できるようになります。500kwの発電規模ですと、年間の売電収入が大体7300万円くらいになります。7300万円のうち、6000万円を返済に回すと、1300万円が残ります。1300万円から、発電施設の維持費として人件費等で年に600万円ほど引くことになります。残りは700万円になります。この700万円は、初期費用を返済している期間の利益になるわけです。返済がなくなる15~18年後には、新たに6000万円の利益が生まれます。これが、市町村の自主財源になります。こんなストーリーが実現すれば、ハッピーです。

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